第5話 冒険者の仕事

「忘れてたよ・・家賃を払わないといけない・・・」


僕は家で頭を抱えていた。

古い家なのでかなり安いのだが、毎月決まった金額を支払わないといけない。

それでも毎日宿を借りるよりはだいぶ安いのだけど。

今月は支払いが厳しいな。


「お金を稼げばいいのね?じゃあ、サクッとモンスター討伐行きますか」


「え、えええ?」


「払わないと追い出されるのでしょ?背に腹は代えられないわ。ギルドへ行くわよ」



レイシアの後を追いかけて、僕は冒険者ギルドへ向かった。


「別に払えなければ、実家に帰ればいいんだし・・」


「男のくせにウジウジしてるわね。いい加減腹決めなさいな」



**



冒険者ギルドに来た途端、受付のマリアさんに話しかけられる。


「今日も薬草採取ですか?」


レイシアは掲示板から、紙を噛んで一枚の依頼を引っぺがした。

この依頼を受けろという事なのだろう。

どれどれ。


「え~ゴブリン退治?」


僕はレイシアに背中を押された。

文字通り、レイシアは頭で僕の背中を押しているのだ。

おずおずと依頼を受付に出して手続きする。


「初めてじゃないですか?魔物討伐、頑張ってくださいね。無理なら早めに帰ってきても良いんですよ?」


確かキャンセルは違約金が発生するはずだ。

そんなお金は払えない。

ニコニコと手を振るマリアさん。

ぼくは仕方なくギルドを出た。


「いきなりゴブリンってハードル高いよ・・スライムすら倒したこと無いのに」


「私が攻撃するから、大丈夫よ。心配いらないわ」


レイシアが先制攻撃をしてくれるらしい。

魔法使いらしいから大丈夫なのだろう。



**



近くの森の奥深くに来た。

ゴブリンが何匹か集まっている。


「いくわよ」


依頼書によれば、ゴブリンが近隣の村を襲うらしくて、討伐依頼が出ていた。

一応、5匹以上討伐できれば良いらしい。


『コールドパレット』


空中に鋭い氷の柱が、いくつも現れた。

ドカドカ

6匹のゴブリンに突き刺さって、当たったところから凍り付く。

ゴブリンは抗う事も出来ず倒れこむ。

おそらく即死だろう。


「一瞬だな・・」


僕はゴブリンの部位(耳)を短剣で切って袋に入れた。

討伐の証拠になるのだ。


「戦いは長引かないほうがいいからね。苦手なのでしょう?」


「そうだな・・」


それでも後味が悪い。

僕が倒したわけでもないんだけど。

直ぐに冒険者ギルドへ持って行って換金する。

何とか家賃代にはなって一安心だ。


そういえばマリアさんが凄く驚いていたな。

まさか討伐できるとは思っていなかったのだろう。

自慢じゃないが、今までスライムだって倒したこと無かったのだから。


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