第3話 新たな能力

「フィル・・・」


あの男の子を見ると、堪らなくキュンとしてくる。

私、結構大人なんだけどそういう気があったのかしら。

他の人に撫でられても、今までそんな事なかったのに。

撫でられると、気持ちは良いけどね。

もしかして恋かしら?と思ったのだけど。


「あら?」


フィルから微量の魔力が感じられる。

もしかしてあの能力なのでは?


「あなた、テイマーの素質があるんじゃないの?」


「テイマーって?」


「動物から好かれる能力を持ってる人よ」


「そういえば、昔から犬や猫には無性に懐かれていた気がするけど」


「魔物を従えることも出来るんじゃない?」


「まっさか~」


じゃないと、この私の気持ちの説明がつかない。

ホッとしたような、残念なような。


「試してみましょうよ」



**



次の日、森に出かけてスライムを探した。

スライムなら弱いし、いざという時倒せるから。

目の前にプニプニした物体が現れた。

透明な、まあるいスライムである。


「手をスライムにかざしてね。手に魔力を集めるイメージをして・・集中して声に出してみて。ティムって」


『ティム』


淡い光がスライムを包み込んだ。

スライムは、すぐに僕に懐いてすり寄ってきた。


「やっぱりね。思った通りだったわ。まさか一発で成功するとは思わなかったけどね」


これって魔法だっけ?

確かスキルってやつかもしれない。

僕もやれば出来るじゃないか!

心がうきうきしてくる。


帰り道、僕はスライムを右肩に乗せていた。

さっきから、レイシアが下から見ている気がするんだけど何だろう。

ふいに僕の左肩に乗っかってきた。


「急に、どうしたの??」


「別に、高いところを見たくなっただけよ」



****



僕は家のベッドで転がっていた。

今まで、何も出来ないと思っていただけに少し自信が付いた気がする。

以前、冒険者ギルドで鑑定をした時は魔力無しだったのだ。

スライムは吞気に、僕の家をあちこち歩きまわっていた。


「きゃっ!え?何これ・・」


リナの声が聞こえた。

あ、びっくりさせちゃったか。

彼女はいつも家に勝手に入ってくるからな。


「これ・・どうしたの?」


リナはスライムを指さした。


「試しにティム出来るかもってやってみたら、出来ちゃったんだよね」


「そうなんだ、よく見ると何だか可愛いね」


ツンと指でつつくリナ。

ぷるぷるとスライムは震えた。

ゼリーみたいだ。


レイシアはソファに丸まって寝ていた。

猫は気楽なものだ。

長い時間起きていられないとか言ってたっけ。

猫だから?

疲れやすいのかな。


「すっかり、フィルの家の猫になっちゃったね」


「あはは・・」


リナにこの猫の正体を伝えたら、びっくりするだろうな。

猫がこんなに美人なのだから、人間も結構美人な気がする。

元に戻れるのだろうか?

戻った姿を見てみたい気がするけど。



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