第2話 アイドル

奇妙な同居?生活が始まった。

僕の行くところ猫が付いてくるのだ。


「冒険者ギルドね。いいんじゃない?」


道を歩いているとレイシアが付いてくる。

猫が付いてくる冒険者って・・可愛いけど・・せめてオオカミとのテイマーとかなら恰好いいのにな。


冒険者ギルドのドアを開ける。

構わず付いてくるレイシア。

毛並みが美しくて、上品な気品の猫。

貴族が飼っていてもおかしくないくらいだ。


レイシアが虐められないか、少し心配だったのだが杞憂だった。

冒険者たちから撫でられている。

いつも対応が冷たい受付のマリアさんでさえも。


「可愛い猫ちゃんですね。触っていいですか?」


態度が180度違う。

みんな癒しが必要なのだろうか。


「あ、薬草採取ですね。行ってらっしゃい」


めちゃくちゃ愛想がいいんだけど、どういう事だ?


**


森に来て、僕は薬草を探し始めた。

ずーっと同じ仕事だから慣れたものである。


「あんた、いつも薬草採取しかしてないの?」


「魔物を殺すとか苦手なんだよ」


「ふうん、そうなのね・・じゃあ魔法を教えてあげようと思ったけど、要らないわよね?」


えっ?今魔法って言った?


「猫が魔法出来るわけないじゃないか」



『ファイヤーボール』


レイシアが唱えると、空中に火の玉が現れて飛んでいった。

僕の後ろの草が燃えている。


「出来るでしょ?まぁ威力は落ちるけどさ」


火の勢いは止まらず燃え続けていた。

背中が熱くなってきた。


「・・凄いけど・・でもこれ消した方が良いのでは?」


「まぁ、こんなこともあるわよ『ウォータボール』」


空中から水の塊が大量に出現して、燃えさかる火を消火した。

量を自在にコントロール出来るようだ。


「この姿で魔法使った事無かったから、コントロール難しいわね」


そういえば、杖も無しに器用に魔法を出しているな。


「杖はこの体じゃ持てないしね。早く元に戻りたいわぁ」


「えっと、君もしかして人間なの?」


「最初からそう言ってるじゃないの!信じてなかったのね・・まあ仕方が無いけど・・私は元々魔法使いなのよ、事情があって今はこんな姿だけどね」


人間が猫に変わるって聞いたことが無い。

僕も魔法をそんなに知っているわけじゃないけど。

高等な魔法だったらそんな事が可能なのだろうか。


「あんまりジロジロ見ないで・・恥ずかしいから・・」


「あ、ごめん」


そうか、この人は女の人なのかな。

全く意識してなかったよ。

僕はおもむろにレイシアを抱っこした。

至って普通の猫だ。


かなりの美人だと思う。

僕は撫でてみた。

柔らかくて気持ちが良い。

撫でてもやっぱり猫だよな。


心なしか、レイシアが照れているような気がした。

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