第2話 もうひとつの回想

「ばあば、ほんとっにココが好きなのね。

何処かに行こうって言えば必ずココなんだもん。」


「ふふふ。

ありがとね、ナオちゃん。

ここは、ばあばにとってね。忘れられない場所なのね。」


「ねぇ、また、お守り持ってきたの?

その中身は何?

ぜっーたいに見せてくれないんだからぁ。」


「そうね。

今日はナオちゃんにばあばの秘密をはなしちゃおうかしら?」


「ばあば?

それって亡くなったじいじとの熱愛?

それとも、他の人とか?」


「まあまあ、まずはこのお守りを見てちょうだい。はい。」


「ばあば、これってジュースの王冠かな?」


「そうよ。今じゃビンのジュースなんて

殆ど無くなったけどね。

ばあばの子供の頃にはね。

それの裏をみてごらん。」


ナオは王冠の裏側を見た。

そこには少女の白黒の写真が埋め込まれていた。


「これ、、。

ばあば?」


「よく似てるでしょう?ナミコちゃんって言うのよ。


ばあばは話してくれた。

戦争孤児になったばあばは教会の孤児院にいたこと。

そこで、クリスチャンのご夫婦が養子を欲しがっていたこと。

本当はナミコちゃんが選ばれたこと。

ナミコちゃんには、病気だけどお母さんがいたから日本にいたいって、、。

ふたりはよく似てたから、ばあばが代わりに

養子になってアメリカに渡ったこと。

初めはとても幸せだったし、見たことも無い

世界だったこと。

養父さんが朝鮮戦争で亡くなったあと、養母さんも病気になり、アメリカの孤児院に入ったこと。

それでもハイスクールは卒業して、英語と日本語が話せたから日本のアメリカ支社の会社に就職できたこと。

そこで、じいじと知り合って日本に帰ってきたこと。


「私ね、ナミコちゃんに最期に手紙と赤い靴を送ったの。あれ、本当ならナミコちゃんが履くはずだったから。

それきりね。きっと、ナミコちゃんも、

生きていくのに、必死だっただろうしね。」


「そう、、。

ばあば、ナミコさんどうしてるんだろうね?」


「幸せでいてくれたらねぇ。

あ、ほら、この曲、、。

まるで、ばあばとナミコちゃんの事を歌ってるようでしょう?

きっとね、私達のような子供が沢山いたと思うのよ。

この海岸を見るとね、そう思うの。」


「そうだったの、、。

赤い靴履いてた女の子、、。」


ばあばの背中は何だか声を掛けてはいけないように見えた。


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