第13話rhapsody①

ゴーン ゴーン ゴーン


その広い屋敷の中で時計の鐘の音が鳴り響いていた

そこを駆けて行くひとりの小さな子供の事をまるで追い立てているかの様に


ゴーン ゴーン ゴーン


また鳴り響いた


まだ4歳になったばかりの玲奈にはその音がとても怖かった

まるでお化けの唸り声にも聞こえた


玲奈は必死に走った


お父さん と お母さん そして お爺ちゃんの居る所へと


玲奈の眼前に白い光りが広がった


そからは お父さん お母さん お爺ちゃんの声に混ざって、知らない人達の声も聞こえて来ていた


玲奈のたどり着いた場所

そこは庭だった


玲奈が息せきを切りそこに立ち尽くしている事にその庭に居る全員が気付き、

言葉を止め、そして目を向けて来た


その中には玲奈の知らない男の人と女の人と一緒にふたりの女の子が居た


その女の子たちはふたり共、同じ顔していた

そしてふたり共、同じ白いワンピースを着ていて、髪も少し紺色掛かったその長く伸ばした髪を腰まで流した同じ髪型だった


玲奈はそのふたりを不思議そうな目で見詰めた、玲奈に映るそのふたりは庭に咲いている黄色いマーガレットの花の森の中に現れた妖精の様に見えた。

すると今度は、そのふたりは互いに顔を見合わすと同じ動きを取り可愛らしく右に居る女の子が右側に左側の女の子が左側へと小首を傾げながら玲奈を不思議そうに見詰め返しすと暫くの間、二人一緒になって玲奈の顔をジッと見てから


「クスクス」


小さな声を合わ笑いながら合っていた。


玲奈の目にはそんな二人の姿も何か不思議物を見て居るかの様に映り

玲奈はその眼を輝かせ頬を朱に染めながら見惚れ


「お人形さんみたい」


と思わずその気持ちを言葉にし口に出していた。



その言葉を耳にした二人の女の子たちは咄嗟に笑うのを止めると、少し驚いた顔で玲奈を見、そして又お示し合わせたかの様にお互いに視線を交わすと、余程この二人は気が合うのか、互いに顔を真っ赤にして恥じらう姿を見せて来た


その二人の取ったリアクションは幼い玲奈のハートを直撃し破壊した

玲奈は思わず


「わぁー!、わぁー!、いやー可愛い♪」


玲奈はもう何が何だかんだか解らない、とにかくその可愛い生き物達に向かって走り出し近づこうとした


と、その時


「あらあら、玲奈!、ダメよ止めなさい!」


とそこに居合わせた、玲奈のお母さんのマリアがそう言いながら駆け出し玲奈を制止しよとしたそう時


その横合いから透かさず


「おっとそこまで」


とお父さんの弘が割って入り


「よっ!」


と言って玲奈の身体を受け止めると

そのまま玲奈を抱き上げた

玲奈は思わず


「わぁっ!」


と驚きの声を出し

続けて


「いやだぁ~妖精さぁ~~ん!」


と自分の思惑とは外れたこの展開に

身体をジタバタとさせながら

駄々をこねた


すると父の弘は


「解った、解った」


駄々をこねている玲奈を宥め


「良いかい玲奈、あの娘達は妖精さんじゃないんだよ」


と言うと

その母マリアも玲奈と弘の傍まで近づき


「そうよダメよ玲奈ちゃん、あの娘達は貴女のお友達なのよ」


と駄々っ娘、玲奈を嗜めた

だが、それでも納得の行かない玲奈は


「いやだぁ~!いやだぁ~!」


と今度は泣き叫びながら駄々のこね具合をヒートアップさせて来た


それは義父への手前であった事も手伝っていた

義父の剛蔵はマリアには厳しく冷たかった

面当ても当たり前の様に酷く

時にはマリアの事を酷く罵る事もあった


長男である弘の嫁が外国人の女と言う事が気に入らないのだ


だからマリア剛蔵を畏怖していた


だがそのマリアのすぐ傍にいる夫の弘は

そんなマリアの心情も知ろうともせずに

我が子と一緒に楽しい家族生活を謳歌していた


弘は我が子に


「ハハッ」


と笑って見せ

それから


「あの子達が気になるのか、良いか、あの娘たちは、お父さんのお友達の如月さんの家の娘で優ちゃんと舞ちゃん、なんとふたり共、双子の姉妹なんだぞ」


と、弘は玲奈に向かって笑顔で目の前に居る双子の姉妹、優と舞の名を口にした


そこで要約落ち着きを取り戻した玲奈は

今までの騒動でキョトンとした顔で玲奈の事を見ている優と舞その双子の姉妹の姿を見詰め返しすと

ゆっくりと口を動かし


「優ちゃんと舞ちゃん?」


その父の言葉に反芻するように答えた


「そうだ、優ちゃんと舞ちゃん、ふたり共

お前と同い年の4歳だ」


そしてまた玲奈は


「優ちゃんと舞ちゃん……」


ともう一度その名を呟いた


そして仲良しとなった優と舞と玲奈の幼い子供たち三人はその黄色いマーガレットの咲く庭で何時までも遊び転げていた


それは遠い夏の日の出来事だった

























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