第10話nocturne/優
夕方
そこは小さな公園
今そこに人の姿は無いかの様に
淋しい色を称えていた
今そこにはキィキィと金属の擦れ合う音が響いていた
その公園の片隅には2列に並ぶブランコがあった
優がそのひとつに座り
緩やかに前後へと小さく揺らしていた
優は黄昏た様子で
ただ虚空を見詰めていた
思っていた通りに玲奈の危惧話しはいつも通りに
大袈裟なだけだった
聞けば
妹の舞が音楽教師である睦月愛に独り音楽室に呼び出されていたと言うのだ
しかしと
優はそれが良く解らなかった
睦月と言う教師は 舞 の担任でも無ければ
生徒指導の担当でも無い
そして何故、舞が呼び出された場所が学校の音楽室だったのか?
舞が何事かをやらかしたにしても
呼び出した教師が音楽教師で
その場所が職員室でなはなく
音楽室だったのか
訳が解らなかった
その時
ひと筋の風が静かにそよいだ
その風は優のピンク色に染まる頬を撫で
次には紺色の髪を靡かせてながら
夕方の日に輝くトパーズ色の優の瞳を
覆い隠した
するとすぐに風が止んだ
少しの間があり
優は揺らしていたブランコを止め
立ち上がった
『家に帰ってから、舞をとっちめってやるか……』
と心の中で呟いき
暫く呆けた様子で
日の暮れ始めた空をじっと見詰めた
だがやがて優がその心の中に抑えていた物が静かにその感情
いや心をジワジワと浸食をし始め
優のその顔付きを鋭い物へと変えた
開いていたその両手も優は無意識に強く握りしめていた
その心に浸み渡ったモノ
それは
睦月愛に対する憎しみだった
いや憎悪や嫌悪とも言えた
優はその思いを隠さずに呟いた
「アイツは……アイツは私達やお母さんからお父さんを盗んで行った敵なんだから!!」
「絶対に許さない!」
と姿の見えぬ愛に向かって
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