第9話nocturne 玲奈
その朝、学校へ着くなり優はクラスメイトの
神無月(かなづき)玲奈に教室から引き出され今は人気の無い更衣室へと押し込まれた。
何事か?
と優がその事を理解するよりも早く
玲奈は矢継ぎ早に口を開いた
「如月さん!、貴女の妹。あの娘また何かやらかしたの?」
優『??』
その言葉は余りにも突飛過ぎ
更にはその状況も全く掴めていない優はただ混乱して、玲奈が何を言って居るのかが、さっぱり分からなかった。
だから
「ちょっと待ってよ、神無月さん、なんなのそれ?、私、訳解らないよ」
と優は、玲奈に
『まぁ取り敢えず落ち着きなさい』
意を込めてそう言ってみた
が、玲奈は元々プライドが高く
自分の意にそぐわない事に対しては決して妥協する事を許さなかった
詰まりは自分から折れると言う事を知らない性格の持ち主だった
「貴女ね!、如月さん、これは貴女の家だけの問題じゃ無いのよ!。」
と玲奈は唾が舞い散らんばかりの勢いの有る口調で優に食って掛かって返して来た
イギリス人と日本人のハーフで色白の肌と蒼く澄んだ瞳に黄色に輝くブロンドの髪の持ち主で段は大人しく気品に溢れた美少女
この学校でも多くのファンを持つ美少女 玲奈 しかし、その気品に溢れた美少女も今は優を鬼の形相で睨み付けている
優はそんな玲奈の返答から『あぁ、また家の話しか…』と『いつもの事か…』と、何となく その美少女 が言わんとしている事が要約わかり、『全く』とため息を一つ吐くと
「それで?」
と、玲奈に言うと
玲奈が次の言葉を口に出すその前に
「腕、痛いから」
と遮り
顔で玲奈が強く握る手を指し示すと
玲奈は咄嗟にそこに目を向けて
それを見ハッと息を呑んだ
玲奈は優の腕が赤くなる程にまで力強く掴んでいた
そうして優を教室からこの更衣室へと引っ張って来たのだ
詰まりは自身が感情的になり
如月優と言う他人に暴力を振るってしまった
『私、なんて事を…』
と心中でその苦悩を呟き
そして
玲奈はそっと優の腕から手を解いた
優と舞は小さな頃から玲奈を知っていた
お嬢様気質で高飛車な所もあるが
根は優しい少女であり
暴力とは無縁な性格の持ち主であった
その性格故か
『酷い事をしてしまった』
と自身を悔い
と同時に自身の胎内に宿る[ケモノ]に畏怖しそして震えた
玲奈は自身の中の血の気がサッと引いて行く音を感じ取った
優もそれを眼で見て感じていた
玲奈の顔からは怒りが消え
今はその顔からは血色が無くなり
青白くなった顔を俯かせ
そして縋る様な目で優を見ながら
「ごめんなさい、わたし……」
と小さく呟いた。
そんな玲奈の姿に優は
『全く、これで何度目なんだろ?…』
とため息を吐き、事ある毎に、ギャー、ギャーと振り回され続けて来た歴史を思い返した
『何度目の記憶のリピートなんだろ?、これはもう走馬灯みたいじゃん』
そして
『この完璧主義者め』
『やれやれ』
と呆れ
またため息をひとつ吐いた
そう、神無月家の誰かに教育されて来たのかそれとも 玲奈 自身が自らが
[全てがこうであり、そうで無ければ成らない]
のカテゴライズしてしまったのかは解らない
だか、それ故に 玲奈 は極度に自らの失敗を恐れる傾向があった
優との1件など些細な事なのだ
『もういつも大袈裟』
と三度目のため息を軽く吐きながら
「怪我もしてないし、大丈夫だよ」
そう言って玲奈をなだめた
そうでも言わないと玲奈はその自身を納得をしないしさせないだろうと
それを優は痛い程に良く知っていた
「ごめんなさい」
と、弱い声で玲奈はまた返して来た
正直、この不思議な押し問答にそろそろ区切りを付けたい
だから何とかしよう
の一心で
優は
「解ったからもう良いよ」
と玲奈に返した
すると玲奈は
「ありがとう、ごめんね」
と和らいだ顔に笑みを浮かべ
そして優を見た
優もそれに笑みで返すと
そろそろ、無理やりに教室から、こんな埃っぽい更衣室まで連れ込まれた理由を玲奈に問い正すターンへと入ったな
と確信し
玲奈は家同士がどうのこうのと言っていてもその実は大した事じゃない
そんな感じがするし
別に聴かなくても
な事だろうけれども
とにかく、ここから早く出たいし
一応
「で、家の舞がどうしたの?」
小首を傾げて
笑顔で聴いてみた
優は演じていた[私は玲奈ちゃんのお友達]と言う役を
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