第6話ノクターン②
朝
ピピッ ピピッ ピピッ
それは突然に微睡みの中に響いた
更に
ピピッ ピピッ ピピッ
と、その音は舞の微睡みの中に続け様に割って入って来た
「う~ん」
と唸りながら、身悶えた
ピピッ ピピッ ピピッ
まだ、続く
『煩いな』
と舞は知覚した
ピピッ ピピッ ピピッ
「う、う~ん…」
舞はまだ微睡みの中に残る眼をゆっくりと開けた
ぼやけ眼の中に朝日の光とその中に浮かぶ部屋の景色がうっすらと入って来た
そこには、黒を色調とするタンスや机などのゴシック系の家具が並んでいた
僅かな隙間から朝日が差し込む窓にはやはり黒を基調とする色柄の、お姫様カーテンが掛けらている
そして部屋の1番奥にはまるでそこに座ってでも居るかのように置かれた薄茶色のテディベアが乗る木製の黒い椅子が置かれている。
今の舞にはそれらの全てが霞が掛かりぼやけて見えていた。
そこへ更に
ピピッ ピピッ ピピッ
まだその音は鳴り続けている
「あっ!」
突如として舞の知覚にスイッチが入りると
次には
寝ていた体を捻りながら布団中から腕だけを伸ばしてそのけたたましい音を鳴らしている目覚まし時計をその手で弄り探した。
「もう、どこ?、どこ?、煩いなぁ…」
と、その思惑に外れそれが舞の手に触れる事は出来なかった。
「もう……」
遂に観念したのか、その言葉を吐くと
気怠げな上に仕方無いか
が丸見えな様子で布団中から上体を起こし
ピピッ ピピッ ピピッ
舞はその次にはけたたましい音を叫き散し続けている
目覚まし時計を捕まえた!
と言わんばかりに両手でがっしりと掴み取ると
「コイツめ!」
と不機嫌な目でそれを見ながら
アラームのスイッチを切り
舞はベッド上にあるいい加減な場所にソイツを投げ捨てると
寝グセでモシャモシャになった髪を掻き上げながら
「全く」
と、吐き捨てた
室内には朝の静寂が満ちていた
舞はそのまま暫くぼぉ~っと何処と言う場所では無い空間をただ静かに見詰めていた
だが、不意にそれは脳裏に蘇って来た
忌まわしき過去
忘れたい事
それらが容赦なく、まるで流れ込んでくる水流の如く舞の名かを支配的していった
舞は溜まらずに
「あぁーーっ」
と言いいながら
その頭に手を当てると
布団の上にあるその身体を丸く抱え
そして、最早どうにもならない過去の悲しみとそして今尚残る、心と身体をの中を駆け巡る痛みに、まるで寒さを耐え忍ぶ子猫の様にその小さな身体を震わせて、舞は泣いていた。
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