第12話 多種多様な才能
最近、なにかを食べて美味しいと感じたことがない。マズイと感じたこともない。
味をあまり感じないのだ。少し前に流行した感染症になった覚えはない。ただただボクの味覚が死んでいってるのだと思う。
高校生でこのザマなら老後が思いやられる。いや、そもそもボクはあと何年生きられるのだろう。こんな状態で大人になれるのだろうか。
未来のことを考えると胸が詰まる。呼吸ができなくなる。それでも脳内に未来が浮かんでしまう。中途半端に希望があるのが逆につらい。
……
クラス1のイケメンと2人きりで食事。通常のラブコメだったらボクは大喜びしているんだろうな。
人が苦手なボクでも、一対一での会話くらいならなんとかなる。もちろん上手に会話できるはずもないけれど。
「なぁ
「……なにも、ないよ……」強いて言うなら漠然とした不安だ。「心配してくれてありがとう……でも、大丈夫だから……」
「……」明らかに心配されている。「無理に聞き出すつもりはないけどさ……なにかあったら言ってくれよ。俺も……
協力されてしまうから言いたくないんだけれど。放っておいてほしいのだけれど。
でも彼らが悪いわけじゃない。悪いのはボクだ。集団に属していたいくせに、集団に馴染めない。そんなボクが悪いのだ。
少し空気が悪くなって、
「そういえばさ……競技大会の出場種目、決めた?」
「きょ、競技大会……? ああ……まだ、決めてない……」
そういえば、そろそろ決めないといけなかったか……忘れていた。
「この学校も変わってるよな」
「そ、そうだね……」
そう。それがこの学校の特色の1つ。というより……最大の特色だ。
運動会や体育祭があるのなら、クイズ大会やゲーム大会があっても良い。そんな考えのもとに生まれたのが『競技大会』である。
「競技大会に3日もかけるんだぜ。力の入れようが違うよな」3日かけて、それぞれの学生が得意分野で勝負する。「
「あ……えっと……」なんにも決めていない。「どんな種目が、あるんだっけ……?」
「通常の運動会みたいなものとか、ゲーム大会とか……タイピング大会とか弁論大会とか筋トレ大会とかクイズ大会とか、大食い大会とか……」
そんなに種目があったのか。興味がないから知らなかった。
「他にも……意見が多ければ新しい大会を作ることも可能みたいだ。得意分野があるなら、新しく作ってみたら?」
……
ゲームの
あるいはノベルゲーム攻略? ボクに得意とか好きとか言える分野があるとしたらノベルゲームしかないが……大会を設立するほどでもないな。うん。
「
やはり通常の運動会だろうか。運動神経良いもんな。
「ああ……クイズ大会だよ」意外……でもないか。頭も良いもんな。「
「……そう、なんだ……」
「うん。といっても……クイズ大会に参加するだけ参加して、それで競技大会を乗り切ろうとしてる人も多いみたいだね。真剣にクイズをやろうとしている人は少ないかも」
「あ……そうなんだ……」
「競技大会は強制参加だからね。必ず、どれか1つの種目には参加しないといけない。体を動かすのが面倒なら、適当なグループでクイズ大会ってのが無難かも?」
まったく答えずに、考えるふりだけをしておけばよいわけだ。
そんなことを思っていると、
「
「……私?」
「うん。どうせ出るなら優勝したいし……メンバーを勧誘してるんだよ」さっき言ってた勧誘ってのはそれか……「
「……そんなこと……」
「謙虚だね。そういうところ好きだけど」すぐに好きとか言えるのが羨ましい。「とにかく……メンバーに名前を入れるだけでもいいよ。それで参加したことになるし……複数種目に参加するのはアリだから、他に出場したい種目があれば、そっちに行っても良いし」
複数参加は認められるようだ。運動会にも出てクイズ大会に出場する、という芸当も可能らしい。
ボクはやらないけれど。
ともあれ……
「じゃ、じゃあ……お願いしてもいいかな……」ありがたい申し出だった。「戦力には、ならないけど……」
「大丈夫大丈夫。頑張ってくれさえすれば、誰も文句なんか言わないよ」そう。なのだろうけど……「じゃあ、メンバー表に加えておくね。エントリーも済ませておくから」
というわけで、ボクの出場種目はクイズ大会になった。
……
少しくらいクイズの勉強をしておこう。
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