第9話 らしい
ボクが勝手に憧れている2人。思えばその2人は、ボクが持っていないものをすべて持っているような気がする。
隣の芝生が青く見えるだけなのだろうか。それとも……ボクは私が、そんなにも嫌いなのだろうか。
彼ら彼女らは……とても『らしい』と感じる。
ボクはどうだろうか。ボクのらしさとはなんだろうか。そんなものが存在するのだろうか。
「お昼、食べに行こうよ」昼休みになって、
そう言われて断れないくらいには、ボクは優柔不断だ。本来なら
ボクは流されて食堂に行って……
ボクとあの2人は違う。ボクみたいに自分のない優柔不断女とは違うのだ。
ボクは彼ら彼女らのように離れない。なぜか勝手に距離を感じて、絶望感に打ちひしがれていた。
「……ねぇ……
「へ……?」
言われて、ようやく正気に戻った。
現在地は……食堂だ。そうだ。
なにを注文したんだっけ? 目の前にはオムライスが置いてある。どうやらボクがオムライスを注文して、席まで運んできたらしい。
まったく記憶にない。本当にボクはそんなことをしたのだろうか?
ともあれ……大丈夫と聞かれたら返答は1つしかない。
「だ、大丈夫だよ……ちょっと……考え事があって……」
「……本当に?」
「う、うん……」ウソだ。本当は何も考えていない。「わ、私は大丈夫だから……」
「……」
悩みなんてない。本当に……ただの不注意だ。
というか私たちって友達なんだっけ……?
「だ、大丈夫だから……」
「言ってくれなきゃわかんないよ」だからないんだってば……「アタシたちは
そうやって詰め寄られるのが怖いんです。1人で悩みたいときもあるんです。
いつも思う。ボクは集団に属するのが苦手だ。いつもチームの空気を乱してしまう。申し訳なくて仕方がない。
そんなボクの心に、
「ねぇ
「ご、ごめん……!」怖くなって、ボクは席から立ち上がる。「ちょっと気分悪くて……ほ、保健室、行ってくる……!」
そのままボクは逃げるように食堂をあとにした。
……
いったいボクは、なにをやっているのだろう……
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