第2話 謎の結界
4月。新学期。
学校という怪異の溜まり場に行くこと自体、俺にとって気の進むものでは無かった。
人が多く、縛りの多い場所ほど怪異は集まり、力を増す。
そんな魔境になぜ俺は行かなければならないのか。
義務教育と言ってしまえばそれまでだが、シンプルに親に心配をかけるし、学校じゃノリのいい男を演じているため、キャラ的に不登校なんて不可能だからである。
俺が怪異事件に巻き込まれるのは大抵週に一回。
今年の終わりまで果たして俺は無事に生きていけるのか。
やっぱり家族の為にも遺書はどこかに遺しておいた方がいいのかもしれない。
まあ、遺書は書いておくに越したことはないだろう。損はしない。
しかし、そんなふうに覚悟して挑んだ俺は拍子抜けすることとなる。
(怪異が、いねぇ)
俺の目には怪異が視える。
いつもなら壁に床に人にうじゃうじゃ憑いてるはずの怪異が一匹もいなかった。
こんなこと、あんのか。
学校にいる間は一日中上の空で何も気づかなかったが、校門から一歩出た瞬間景色が変わった。
そして、うっすらと視える学校を覆う膜のような何か。
俺は思わず息を呑む。
これは、結界だ。
(まさか、これのせいで怪異がいねぇのか?)
「あ、やべ。忘れ物した」
隣から聞こえたクラスメイトの大きな声にハッとする。
「マジかよ」「先帰ってるな」なんて周りの奴らはソイツを茶化していた。
やべぇ、気ぃ取られ過ぎてコイツらと帰ってること忘れてた……。
「取ってくっからお前ら先帰んなよ!」
盛大にフラグをたてるソイツの後ろにはぴったりと猫の霊がくっついている。
悪意は感じねぇし、守護霊か?
動物の守護霊ならば死んだペットとでもいうところだろう。
ボケーッとしながらソイツの背中を見つめていた、その時。
結界に守護霊が弾かれた。
俺は声が出そうになったのをグッと堪えたが、一人が訝しげにこちらを見てくる。
「おい、陽介。どうした?」
「いや、なんでも」
嘘だ。
ヘラっとした笑顔で誤魔化しているが、なんでもあり過ぎて困ってる。
猫の守護霊は可哀想なことに結界の前を彷徨いていた。
おいおい、守護霊弾くとかどんな結界だよ。
そりゃ、今日一日学校で怪異を見なかったわけだ。
(このレベルの結界を張るっつーことは相当の手練か?)
結界は基本悪意のある怪異のみを弾き出すものだ。
そして、条件を狭めることで少ない霊力で高度な結界を張ることが出来る。
それをこんな「怪異全部」なんて広い条件にしたら莫大な霊力が必要なはず。
それとも何か別で条件があんのか?
(何はともあれ、誰だよ。こんなやべー結界張ったヤツ)
俺の頬を冷や汗が伝った。
怪異ホイホイな俺の後輩がチート過ぎるからちょっと聞いてくれ 波野夜緒 @honcl
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