第5話『私は諦めた』

 私は幼馴染の黒峰くろみね遠夜とおやの事が、1人の異性として────好き。


遠夜とおやに友達が出来たり、彼女が出来たりしてもさ、たまにこうして一緒に────って、彼女が出来たら難しいか」

「……そうだな」


 だから胸がチクッと痛んだ。自分から言ったのにそれを肯定されて、それはつまり遠夜が私以外の誰かと恋人関係になる可能性があるという事を知って────……その事実を受け入れたくなかった。

 だけど、何時かは分からないけどその時はやってくる。その時に「私も好きだったのに」なんて泣いてしまっては遠夜にも遠夜の彼女にも迷惑を掛けてしまう。優しい遠夜は悩んで、折角の青春を楽しめなくなってしまう。それじゃ駄目だ。

 だったら諦めるしかない。玉砕覚悟で告白して今の幸せな関係を壊してしまうより、私がこの恋を諦めていれば……素直な気持ちで祝ってあげられるはずだから。


「彼女が出来たらちゃんと教えてね。変な誤解とかさせたくないから。あ、でも好きな子が出来た段階から知っておかないと危険か」


 想像して悲しくなる気持ちを必死に抑える。


「それを言うならお互い様だけどな。皐月の方こそ、そういう相手が出来たら言えよ。誰かまでは言わなくて良いからさ」

「私はそういうのは全然だから」


 嘘だ────嘘を吐いた。

 私の気持ちに気付かれてしまうのが、怖かったから。

 

 

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