孤独にゲームを楽しむだけの日々――
そんな男の前に、ある日突然、美しい二人の女性が現れる。
彼女たちは、自分がオンラインゲームで使っていた名前を口にし、
まるで旧知の友人のように親しく語りかけてくる。
一体、彼女たちは誰なのか?
なぜ自分のことを「やっちゃん」と呼ぶのか?
記憶のどこを探しても見当たらないその存在に、
戸惑い、怯えながらも、次第に惹かれていく――。
だが、それはただの恋愛喜劇ではない。
ゲームで築いた「チーム」の絆が、
現実世界にも影響を及ぼしていく。
忘れかけていた会話。交わされた約束。
「安っぽい」と思っていた人生に、
少しずつ熱が灯っていくような不思議な感覚。
これは、ゲームと現実の境界が、
静かに、そして優しく溶けていく物語。
『ヤスダヤスオは安っぽい?半分は正解、でも半分はディフェンダーです!』は、心の奥にひっそり眠っていた“誰かを守りたい”という小さな炎に、そっと手をかざしてくれるような物語です。
主人公・ヤスオの不器用な優しさや、言葉にできない寂しさが、じんわりと胸に染み込んできます。ゲームの中では誰かのために盾を構える“ディフェンダー”でありながら、現実では人と距離をとって生きてきた彼が、未亜や凪海と出会い、少しずつ心を開いていく過程が本当に丁寧に描かれていて、まるで眠れない夜に優しく背中をさすってくれるような感覚に包まれました。名前を呼ぶ、ありがとうを伝える――そんな何気ないことが、こんなにも勇気ある行動なのだと気づかされます。
誰しもが「誰かのために生きたい」と願う心を持っている。そのことを、静かに、けれど確かに思い出させてくれる一作です。