第10話 貪食の付喪神
「そうじゃよ、妾と融合したのじゃ」
「そっかぁ……俺が、国宝と……」
え?今誰か喋った?
俺はその声にびっくりして周囲を見回す。特段変わったものは無かったのでほっと胸を撫で下ろし
───「ここじゃよ」
ぞくり。と俺の体を寒気が通る
続いて俺の耳の中を"ふー"という声が駆け抜けて、俺はひいん。と叫ぶ
「カッカッカッ!いい反応じゃなぁ!のう、そうは思わんかね?そこの武器を構えてる御二方?」
俺の首元からぬるりと這い出してきたのは、1人の女
いや、普通の女では無い。それぐらい見ればわかる
「……お前は誰だ?!」
俺はそいつから飛び去ろうとするが、ぬるりと俺に絡みついた腕が離してくれない
まるで蛸のようだと俺は思いながら、その腕に抱かれる
不思議とそれに抵抗はなかった。
「あ!アーテル!コイツ抜け駆けしてる!」
「ええ、許せませんよォ!」
ふたりが一斉に飛び込んでくるが、俺の体に巻きついたそいつは
「やめておけ、お主の愛するものが傷ついてしまうやもしれんぞぉ?」
そう言われたことで、動けなくなっていた。
「カッカッカッ……いい反応じゃなぁ……のう?我が主よ」
誰が我が主だよ?!というツッコミをしようとしたが
それは叶わなかった
俺の口に手を突っ込み、そして一言
「ほれ、ご飯の時間じゃよ」
「…………美味しい」
その言葉に唖然としている表情の二人は
「……ぐ、グリム様!私の手も舐めてください!」
「わ、私もですぅ?!」
焦りなのか、パニックの1種なのか分からないがふつーに危ないことを言い始めた
◇
なるほど、君があの貪食の指輪なのか……
俺の言葉にその通り。と頷く貪食の指輪(以後『デボラ』)。
デボラは、はにかみながらつぶやく
「いやぁしかし……滑稽であったなぁ……そもそもコヤツの初めては妾がとうの昔に奪っておるというのに」
え?というかさっきから俺の知らない話がめっちゃ出てくるんですけど
「お主のアレ、気持ちよかったぞぉ?……」
なんだろう、頬を赤らめないで欲しい。色々と怖い
特にふたりが
二人は死ぬほど睨んでいた。
「アッハッハッハッハッ!!羨ましかろう?……おっと失敬、煽るのはそろそろやめておくかの」
いきなり真面目な顔に戻られるのはやめて欲しい。
◇◇
「それで君は本当に貪食の指輪なの?……どう見ても人型だけど……まさかっ!?」
「長年連れ添ったのは妾とて同じじゃぞぉ?……と言うよりもこやつを生かすためには致し方なく……ではあるがな」
え?生かす……って何の話ですか?
「?お主フツーに考えてわからんか?人間が二千年も正常に生きれると思っておるのか?」
そこは確かに気になるところではあるが
そして俺は衝撃の一言を告げられる
「────まぁお主限界じゃ、少なくともあと10年以内に死ぬ」
えぇ……?!
「ぐ、グリム様が死ぬ訳ないです!」
「そこは同意ですぅ!」
「命を握っておった妾が言うんじゃ、間違いはないと断言できるぞ?」
貪食の指輪と言う存在がそう断言したことで、場の空気は一気に時が止まったかのように静まり返る
◇◇
デボラが言うには、身体も魂も限界を迎えていたと
それをどうにかする為に『生命を固定せし烙印』と融合し、それの力を最大に引き出してやっと今まで生きながらえていた。
という話
そして俺の残されたタイムリミットはあと10年だと言うことらしい
「……10年か……」
冷静に考えてみると、10年で俺のやりたいことを全てやるのは不可能に近しい
もし子供が生まれても、10歳までしか見ることが出来ないのは辛すぎるし
そんな俺に
「───じゃが、世界は広い……もしかしたらお前さんの魂の摩耗と肉体を治してくれるアイテムがあるかもしれないぞ?」
そう、ごくごく当たり前のようにつぶやくデボラ
たしかにな。と俺はため息を吐き出す
可能性が無限に広がるこの異世界で、10年あればきっとそんなアイテムが見つかるかもしれない
それにこんな早死してしまったら、あいつらに三途の川から送り返されてしまう
だからクラスメイトたちの分も俺は生きるために、理想のアイテムを探すための旅を始めることにした
そして新たな仲間(最初からいたらしい)を加え、俺の物語にヒロインが……ヒロインが……
「……デボラさん……君俺のヒロインだったりしない?」
「……違うと思うぞ?……まぁアイテムがヒロインになるわけが無いじゃろう」
「よぉく言いましたねこの盗人!」
「そうですぅ!潰してやるですぅ!」
まぁヒロイン面してるこの二人はさておき
俺の物語のヒロインはどこにいるのやら……
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