第6話 墓標と別れの歌
「お帰りなさいませ!レオン陛下!!」
レオンに連れられて俺達は馬車を降りて城の中に向かっているのだが、如何せん広い
こっちは何があるのか?とか聞いて回りたいが、流石に忙しそうなレオンに聞く気になれず、黙っていることにした
「おや、そちらの方は……まさかあの世界を救うために自らを犠牲になさったと言う伝説のグリム様でいらっしゃいますか?!」
え?なにそれ。知らん怖
メイドさんのような方がそういった途端、辺にいた色んな人々に声をかけられる
そのどれもが俺を褒め称えるものだったので、俺は少しむず痒い思いをしながら
「ちょい、レオン……俺の活躍ってどんな風につたえたんだよォ!」
忙しいことも忘れて聞かざるを得なかった。
レオンはいけしゃあしゃあと
「?世界を救うために自らを犠牲に時間を稼いだ最高の勇者だぞ?……おいおい何が間違っていると言うんだ?」
全てだよ!。と言うも、それを手でぺっぺっと払って
「お前は知らんだろうが、あそこでお前が引き受けてくれなければ……世界は終わっていたんだぞ?」
やたら真剣な顔で言われてしまった。
と言うかそれくらい知ってる。
まあそんなこんなで俺はとある広間に案内された
「……ここは、懐かしいな」
「覚えていたか、ふふふ……だろう?」
そこは俺たちの始まりの場所。
転移した場所にして、俺たちの夢のスタートライン
昔はカビ臭く、妙に雰囲気があったその場所は見る影もなく丁寧に掃除がされていた
「あの後、戦争が終わったことで気持ちに余裕が出来たのか知らんが……メイドさん達が張り切ってここを掃除してな」
なるほど
「その際に、大臣が……ここに記念碑を立てよう!と言い始めて」
それでこのクソデカモニュメントが立っているわけか。
まあいいんじゃない?ってか待て?その言い方だと
「ああ、ここは無料開放している……」
「……その発想は流石に日本人にしか出でこないよなぁ」
俺はそのまま次の部屋に案内された
「……ここは?」
広間のようにしてはやけにものが多く、さしずめ物置といったところか?と俺が思っていると
「ここは俺の部屋だ……はあ、すまんな……年老いてから自らの部屋すら片ずけるのが億劫になってな」
「……ほんとに老いてしまったのだな」
そんなとこでコイツの老いが事実だと知りたくはなかった。
そして俺が最後に案内されたのは
「……墓標か」
城の裏庭。そこに大量に敷き詰められた墓標
それはこの戦いで戦死した者たちが祀られているのだと、すぐに気がついた
刻まれた名前と生きた歳月を刻んだだけの簡素な墓標
それでも、レオンの心の中に彼らを救えなかったことが重く残っているのだと理解出来る
「レオン……」
思わずそうつぶやくと、レオンは
無言でその墓石を指で指し示した
そこは先程までの墓標とは異なり、隔離されたと言うか……別のしきりに覆われていた
「……ここは俺とお前以外のクラスメイトのものだ」
「……ああ」
墓標には彼らの生前に利用していた武器や武具、防具などが飾られていた。
大層な装飾品は、死後の安寧の為だろうか
ちゃんと異世界で名乗った名前と、元々の名前のふたつが刻まれている
それを見ていると、俺もいつの日かここに刻まれるのだろうなと言う少しの恐れが生まれてくるが
「……お前はここに刻まれるのは少なくとも後60年後だろうな」
そう言って笑うレオンの横顔は、やけに寂しそうだった
「さて、大広間に戻ろう……お前に渡したいものがあるんだ」
そう言って俺は大広間に案内された。
「……これ、お前のギルドカードな?……こいつには既にお前の記録がされている……まあ見てみな?」
手渡されたのは、ひとつの黒と白の四角いカード
裏面には何やら複雑な魔法が付与されているようだ。
そしてそれには『
「お前なら世界を変えれる……まあ実際に変えて見せたのだからな……さて、こいつと……あとはこれ」
手渡されたのは大量の金貨の入った袋と謎の封筒
それをギルドカードの前にかざすと、その金貨が全て収納された
「すげぇな!……これはお前が?」
誇らしそうに、そうだ。と頷く
「……でもなんだ?手切れ金みたいな渡し方じゃないか?……」
俺がその渡し方に少々疑問を感じたその時、俺の胸に何かをレオンが差し込んだ
「……そうだ、手切れ金だ…………まあ、これは俺からの最後のメッセージを読んでくれ……ではな」
「……な、何を……」
言うまもなく俺の周囲がゆがみ始め、俺は
──────ここはどこだ?
『グリム様!無事でしたか?』
『あの人、全く殺意がないままだったから油断したわ!』
2人はちゃんと俺の手元に有るから、武器がないという状態では無い
「……雪国?」
俺がいたのは、雪山だった。近くにそこまで大きくない町が見えることから俺はとりあえずここがどこか理解するためにその町に向かうことにした
そして知る。
レオンの最後の行動の意味を
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