第1話 剣と槍
俺は冷静に目を数回瞬かせたあと、首を捻って考え込む
「……?俺の剣と槍?……はて?」
訳が分からないので俺は目を閉じることにする。これは夢……夢だろう。うん、夢だ
俺は再び目を閉じて横になる。
当然目の前にいた女の子達の現像だけは消え失せた
だがふんわりとした女子の太ももの感触だけは消えない
おう。つまりはこれはマジの女の子ってことか
いやいや待て待て落ち着けー俺
「よし、消えたよ……な……っているじゃんかよォ!」
太ももの感触が消えたから本当にいなくなったと思って目を開けたのに、驚くことに二人はまだ俺の目の前にいた
「ほら言ったでしょ?、アタシの太ももの方が柔らかいって!……ねーねーどっちの太ももが寝心地良かった?」
「うーん強いて言えばそっちの金髪と黒髪の──ってそうじゃなァい!」
「あ、アタシの太ももやっぱり寝心地悪いのかなぁ……うう、でも、でも!胸は勝ってますから!」
「ほーん、負け惜しみってことね?良いわよ!この際どっちが一番愛されてるのか分からせてあげなくちゃね!」
何故か2人は勝手に争い始めた。いや意味がわからん
少なくともこのふたりの言っていたことが本当ならば、この二人は俺の愛槍と愛剣という事になる
……付喪神ってことか?確かに日本には、使い古した物に魂が宿って動くことがあるとか昔から言われてたけど……
アレはそもそも……ものを大切にしましょうねっていう教訓の為の作り話で
そもそも論ではあるが、コイツらが俺の愛槍と愛剣であるという証明ができないのだ。
影も形も似ても似つかない(そりゃ剣と槍から人型だもの仕方ないところではある)し
「「グリム様!貴方様!……どっちの方が一番愛していますか?」」
え?いやどっちがと言われましても
「りょ、両方同じくらい…………とかじゃダメですよね!」
すっごい剣幕で睨まれた。というかさっきから少しずつ俺の方に近ずいて来てるのがなんか怖い
なんだろうか、女性に耐性がないせいだろうか?
でも普通にクラスメイトたちとは話を……そう言えば基本的女子と会話するのは『勇者』を介してたなぁ……
「「グ・リ・ム様!!どっちが一番何ですか!!」」
顔が近い。ちょ、離れてくれませんかね?さすがに前は魔法使い目指そうとしてたタイプの人間なのでいきなり目の前にくっそ美人な顔を持ってこられますと普通に緊張して……
ふんわりといい匂いがした。その匂いは俺の鼻の奥から入り、脳内を駆け巡る
あ、ヤバい。色々とやばいかも
世界を救った英雄にしてはちょっと情けない顔をしてうずくまる。
「だ、大丈夫ですかぁ?!」
「ちょっと!あんた胸が当たってるわよ!?」
「当ててんですぅ!」
「くぅ?!私に胸が無いからって!」
やめて?ねぇお願いだからちょっと、しばらく女の人に触られたことないから余計に……
ムニュン。と言う肉厚な音がして、俺の理性が限界を迎えかけた
「ぬぅううう!!」
俺は全力で地面を殴りつけ、なんとかごまかすが
間に合わなかったようだ。
─────世界は何とも広かったんだなぁ
ああ、俺はなんてちっぽけで……呆れるほどに弱いことを忘れていたよ
俺は別にジョブ『賢者』を取っている訳では無いが、その瞬間だけその気分を味わってしまった
だが、特に何も食べたり飲んだりしていないせいか……そもそも久しぶりすぎてなのかは分からないが
特に汚れてしまったものはなかった。良かった
でもさすがにこの二人にもドン引きされて……
「……胸盛る方法ってなんか無い?」
「ある訳ないじゃないですかァ!所詮生まれ持ったものですよぉ?!」
「煽るということは、煽られる覚悟があるんですのね?……良いわよ!あたしにはこの」
パチン、パチンと太ももを叩く音が崩壊した神殿跡地に響き渡る
「この太ももがありますからね!……アンタのその胸に集まったただの脂肪分とは違って、ちゃんと実用的なんですからね!」
「……うぜーです、さっさとその太ももしまいやがれよぉ……」
「ならあんたもその胸を押し付けるのをやめなさい!さすがに主様が苦しそうだから!」
「ちっ、わかりましたぁ……はぁ乳無し如きに指示されました……不愉快ですぅ」
なんか全く気にしてなさそうで嬉しいけどなんか悲しい。
というか本当に胸って肉まんみたいな……っていい加減にしろ俺!
「あのー君たちは本当に俺の剣と槍なんですか?……その、証明できたりとかって……」
2人は顔を見合わせると
「えっと、グリム様しか知らないであろうことを話せばわかってくれますか?」
俺は唸る。確かに俺は槍と剣を四六時中持ち歩いていたから、ぶつぶつ呟いた言葉を覚えられているかもしれないし……
まあ、物は試しだ。やってみよう!
「えっとでは……グランディー姫と勇者ユウキの物……」
「うん君たち俺の槍と剣だね!間違いない!うんそうだね!だから人の黒歴史の夢小説の話するのやめよっかね!うん、人には触れられちゃ困る話があるからね!うん、そうだようん!」
「え?……いい物語だと思いますぅ……」
「良くない!良くないから黒歴史って言うんです!分かったわかったからこれ以上普通に俺の心を抉らないで!」
たぶん俺は人生で1番情けない声をあげていたと、後で振り返ってそう思った
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