第158話 大坂の陣 開戦
「かかれ!」
先鋒、島津豊久、黒田長政、細川忠興が大阪城の南側へ攻め寄せる。
史実では真田丸があったが、今は無い。
「放て! 一兵たりとも討ち漏らすな!」
対するは大谷義治。
その他にも南部利直と明石全登。
そして石田正澄、重家ら浪人衆が守っていた。
「くっ! 流石に厳しいか! 無理はするな! 一度退け!」
黒田長政は敵の反撃に一度兵を退く。
兵力は伊達方、五万。
織田方は十一万。
兵力差で言えば有利であったが、堅牢な大阪城を前に攻めきれずにいた。
しかし織田方も全兵力を投じてはいない。
「黒田殿が引いたか……我らも引くぞ! 細川殿にも後退するように伝えよ! 毛利殿、長宗我部殿と交代する!」
「ここらが潮時か……引くぞ!」
島津豊久と細川忠興も撤退する。
すると、すかさず毛利、長宗我部の手勢がやってくる。
「敵に休む間を与えるな! かかれ!」
「毛利殿の動きに合わせて我らも仕掛けるぞ!」
絶えまない攻撃を受け、石田勢は怯む。
織田方の作戦は、車懸かりの陣のように部隊を交代させつつ戦わせることでこちらの損耗を抑え、敵には絶え間ない攻撃を与え続けると言うものであった。
その作戦により、織田方の優勢となる。
かと思えたが、堅牢な大阪城の堀と石垣、城壁が伊達方を助ける。
「怯むな! 絶え間なく銃撃を浴びせてやれ!」
利直の指示により、的確に反撃を加えていく。
大阪城の堅牢な作りと利直らの的確な反撃で毛利、長宗我部勢も足を止める。
「……南側の防備が弱いとは言え、さすがは大阪城。力攻めはやはり厳しいか……毛利殿も攻めきれていないようだな」
「……まだか。秀信殿」
すると、秀信からの伝令が駆け寄ってくる。
「伝令! 全軍後退し、態勢を整えられよとのことにございまする!」
「よし! 承知した!」
長宗我部、毛利勢も引く。
敵が引いていくのを見て伊達方は安堵する。
「……まずはなんとかなったな」
「利直殿。そろそろ始まりますぞ」
明石全登の言葉を聞き、利直は頷く。
「さて、敵の目を引くか。門を開け!」
利直は馬に乗り、兵を引き連れ、城外へ出る。
「織田の弱兵共! 征夷大将軍の軍の実力、その程度か!」
突如として城外に現れた利直に織田方は警戒する。
しかし、利直は挑発を続ける。
「この様では征夷大将軍に相応しくないな! そのような不甲斐なさでは、秀頼公と淀殿を殺されても文句は言えぬわ!」
利直がそう言うと伊達方の兵が大きな声で笑う。
そして、利直も笑いながら続ける。
「こんな大将に付き従う者共も、間抜け面なのだろうな! どんな顔か見てみたいわ!」
伊達方から笑い声が続いている。
織田方の兵は挑発に乗る寸前であった。
後一声。
そう思った利直は畳み掛ける。
「島津も長宗我部も毛利も、天下を取れなかった理由がよく分かるわ!」
その一言が、織田方を動かした。
いや、島津、長宗我部を動かした。
「かかれ! 島津の恐ろしさを味あわせてやれ! 我らを愚弄したこと、後悔させてやるのだ!」
「我ら長宗我部も続くぞ!」
長宗我部勢と島津勢が挑発に乗る。
しかし、輝元は動かない。
「……ここで動いては敵の思う壺……敵が何を狙っているか見極めねば……」
輝元は怒りを堪えて敵の様子を見る。
しかし、利直が城内に退いた事以外、変わった事は無い。
相変わらず、大阪城の城門を突破できていない。
「やはり、我々を攻撃させようと挑発しただけか……しかし、我等が軍師殿達の考え通りならば……」
輝元はしばらく考える。
そして、伝令が駆け寄る。
「ご報告申し上げます! 大阪城東側の堤が破壊されました! 敵も出陣しておりまする!」
「……来たか!」
輝元は後ろを振り向く。
すると、秀信の本陣から狼煙が上がっていた。
「……よし! 策の通りに行くぞ!」
大坂の陣が、今始まった。
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