第155話 景勝一行 大阪入り
越後を脱した景勝一行は大阪にたどり着いていた。
そこで、第二次本能寺の変と大阪の変を知る。
更に、秀信達と既に和睦していることも耳にした。
「何ということだ……遅かったのか……」
「景勝様。どうも、そう簡単な話では無いようですぞ」
前田慶次がそう言う。
慶次の視線の先では堤が作られていた。
それらを作っているのは伊達によって集められた浪人衆である。
「どういう事だ……何故堤を……」
「殿。近隣の者に話を聞いて参りました」
すると、直江景綱が戻って来る。
「どうやら、和睦の条件として、大阪の地のために働けと、そう提示されたようにございまする」
「成る程……それで堤をつくっているのか」
景勝は暫く考える。
「……見よ、あそこで働く者達の顔を」
景勝のその言葉に、二人は堤を作っている者達の方へと視線を向ける。
「皆、不満そうな顔をしている。……思う所はそれぞれであろう。ここを最後の散り場所としようと思っていた者……織田に一矢報いてやろうと思っていた者……それらが全て果たされず、このような仕事をさせられているのだからな」
景勝の言う通り、それらの者は不満そうな顔をしながら仕事をしていた。
見たところ、作業も捗っていないようであった。
「失礼……もしや、上杉殿ですかな?」
すると、景勝に話しかける男が現れる。
「お主は……」
「は。最上家親……最上義光の次男にございまする」
その名乗りを聞き、景勝は驚く。
「おお……義光殿の……お父上は関ヶ原で立派な戦をしたと聞く……そう言えば家親殿は一度目の関ヶ原で秀忠殿の陣に居たとか……その後どうなされていたのだ?」
景勝の問いに答える。
「は。何とか国に帰ろうとしたのですが、中々上手く行かず、京に潜伏していた所、父が関ヶ原まで来ていると知り、手勢を率いて助けに駆けつけようとしたのですが間に合わず、途方に暮れている所にこの騒動。仇討ち……とは言いませぬが、既に兄と所領も押さえられているでしょうし、ここを最上再興の一歩目としようとしていた所にございまする」
「成る程……しかし、戦は終わったようだが……」
すると、家親はあたりを気にしながら景勝に耳打ちする。
「伊達様は、まだ諦めてはおりませぬ。戦は終わってはおらぬのです。あそこで働いている者達……皆が戦がしたいから不満そうな顔をしている訳では無いのです……」
「……ほう」
「詳しくは大阪城にいる政宗様からお聞きくだされ」
家親は頭を下げるとその場を後にする。
「慶次……兼続……まだ、やれる事はありそうだぞ」
「は。どこまでもお供いたしまする」
「俺も、直江殿と同じ想いにございます」
かくして、景勝一行は大阪入りをする。
果たしてどこまでが、三郎の策なのか。
それを知るものは、ごく僅かである。
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