第133話 大阪落城 大阪の変
「ど、どういう事だ! 何をしている!」
大阪城に居た片桐且元は眼の前の光景を見て、驚愕していた。
伊達の兵が、豊臣の兵を殺していたからだ。
片桐且元は状況を理解しきれていなかった。
「片桐且元だな……」
「……くっ!」
豊臣の兵は殆どが武装を解除しており、その尽くが討ち取られていた。
伊達の兵一万は、城内の豊臣方の兵を殺して回っていた。
「覚悟!」
しかし、伊達の兵の刀が且元に届くことは無かった。
「ぐっ!」
「片桐殿!」
「加藤殿! それに鍋島殿、龍造寺殿も!」
片桐且元の下に加藤清正と龍造寺政家、そして鍋島直茂とその手勢が駆けつける。
「片桐殿。ご無事で何より」
「加藤殿、これは一体……」
「それについては、捕らえた伊達の兵が口を開き申した」
すると、鍋島直茂が口を開いた。
「当初はここまで力ずくで大阪を抑えるつもりは無かったと。しかし、一人の兵が豊臣の兵を斬り殺した所から城内各所で乱戦となり、この有り様と」
「……なんと」
そこで、且元はとある事に気が付く。
「ひ、秀頼様と淀殿をお救いせねば!」
「左様にございますな。伊達の狙いも秀頼公の確保。つまりはお命が危険にさらされることはありえませぬが、秀頼公を取られては我々は少々危険にございます。我等龍造寺も共に参りますぞ」
「無論に御座る! ここは散り散りに動いては危険。皆で参りましょうぞ!」
加藤清正を先頭に大阪城内を駆けていく。
そして、秀頼の居る間に近づいたその時。
「だ、だれか! 秀頼が!」
女性が秀頼を呼ぶ声が響いた。
秀頼のことを呼び捨てにできる人は一人。
淀殿である。
加藤清正達は急いで駆けつける。
「秀頼様!」
「……な」
そこには、血溜まりの中に倒れる秀頼と胸を貫かれる淀殿の姿が。
二人を殺した伊達の兵は顔を隠していた。
「貴様!」
加藤清正がすぐさま伊達の兵を斬り殺そうと襲いかかる。
が、その刃は届かない。
「な……」
加藤清正の刃は突如として現れた黒装束の男達によって阻まれる。
「ここはまかせよ。早く行け」
「……頼んだ」
すると、伊達の兵はすぐさまその場を後にした。
「貴様ら……」
加藤清正は槍を握りしめる。
「生きては返さぬぞ!」
「何だと!?」
「秀頼が……」
秀頼と淀殿が死んだ知らせは直ぐ様伊達成実と片倉景綱の下へと届いた。
「一体誰がやったのだ!」
「わ、分かりませぬ!」
そこで成実はとある事に気が付く。
「待て……信包殿の御子息は何処へ行った……」
「は、信重様は城内におりまする! 本丸近くに居たはずかと」
「……まさか」
「成実様!」
すると、伝令が入り込んでくる。
「津軽様、織田三郎を討ち取りましてございます!」
「おお! やったか!」
「さ、されど……三郎の首は見つからず、混乱の最中三郎が全ては策の内だと言っていたとの事です!」
そこで、成実は気付く。
「信包殿はどこにいる! 城内に居るのではないのか!?」
「わ、分かりませぬ! されど、姿を見たという話は聞きませぬ!」
「……これは、嵌められましたな」
片倉景綱が口を開く。
「信包の謀略に嵌められた、と言うことですな。信重が秀頼公と淀殿を殺し、既に逃げている事でしょう。……最初に豊臣の兵を斬り殺したのも、信重でしょうな」
かくして、大阪城は落城した。
豊臣秀頼と淀殿は死に、豊臣の天下は崩れ落ちた。
この出来事は後に大阪の変と言われることとなる。
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