第131話 第二次、本能寺の変

「殿、間もなく本能寺に着きまする」

「うむ。……虎助? 何故ここにおる」


 数日後。

 三郎達は京へ向かっていた。

 そんな中、京へ向かう三郎に虎助が話しかける。

 その虎助の存在に、三郎は驚く。

 虎助は東へ文を届けに行った筈だったからだ。


「は。殿のお側にいたいと思いまして。文は他の信頼できる者に任せました」

「……そうか。文の内容を見たのか」


 虎助は頷く。


「まぁ良い。お主がそれで良いのならば何も言わん」

「ありがとうございまする」


 三郎は大垣衆百名、そして伊達政宗と天海を連れて京へ入った。

 

「津軽殿もご出陣なされたようにございまする。信包殿から連絡があり申した」

「……そうか。予定通りだな」

 

 すると、部隊の足が止まった。

 

「殿、つきましたぞ」

「……本能寺、か」

 

 すると、本能寺の門が開く。

 三郎達は本能寺へと入って行った。

 

「虎助。今日は何もせずにここで休むとする。予定通り伊達政宗と天海にも部屋を用意せよ。出来るだけ外に近い部屋だ」

「は。承知しました」

 

 伊達政宗と天海は大垣衆の監視のもとで宿泊が許された。

 監視以外の待遇は三郎と同じである。

 

「しかし、よろしかったのですか? 彼の者等をそのような待遇にして」

「あぁ、それも策の内だ」

 

 三郎の策は準備万端であった。

 あとは、事が起こるのを待つだけであった。

 

「皆の者。長旅ご苦労であった。今宵はゆっくりすると良い。俺も休む」

 

 三郎達は休息を取る事となる。

 そして、夜が更ける

 

 

 

「殿」

 

 三郎の寝室に虎助が訪れる。

 既に深夜。

 三郎も眠りに落ちていた。

 

「……どうした」

「恐らく、殿のお察しの通りにございます」

 

 その一言で三郎は起き上がる。

 

「……誰だ」

「旗印は、津軽為信」

 

 三郎は戸を開け、外を見る。

 そこには津軽為信の家紋が記された旗がひしめいていた。

 

「津軽為信、謀反にございます!」

「……是非に及ばず」

 

 三郎は弓を取る。

 

「既にここは囲まれておりまする。逃げ場はありませぬ」

「わかっておる。光秀程用意周到な奴かは知らぬが、逃げ場は無いであろうな」

 

 三郎は津軽為信の旗を目掛けて弓を放つ。

 

「津軽為信! 聞こえているか!」

 

 三郎は大きな声で叫ぶ。

 その声が届いてるいか分からなかったが、三郎は続けた。

 それは、敵の兵士に聞かせるためであったからだ。

 

「お主はまんまと策に嵌ったのだ! 所詮、お主はその程度の男! 狙い通り、伊達政宗と天海は殺さずにおいてやる! 二人共せっかくの高待遇で宿泊させていたというのに、それをお主は無駄にした! そのような馬鹿なお主等の天下はありえぬぞ!」

 

 すると門が破られ、敵兵がなだれ込んてくる。

 三郎は再度弓を構え、放つ。

 その矢は見事に敵兵に命中し、敵は倒れる。

 三郎は次々と敵を葬って行く。

 

「殿をお守りせよ!」

 

 虎助が先頭で敵と刃を交える。

 大垣衆が津軽勢と戦う。

 

「くっ! 数が……」

 

 しかし、多勢に無勢。

 敵はしっかりと戦支度を整えていたのに対して大垣衆は無防備。

 大垣衆は徐々に数を減らしていった。

 虎助は戦況を見て部下に指示を出す。

 

「おい、ここは任せた! 殿!」

 

 虎助が戦線を離れ、三郎の下へ駆け寄る。

 そして、先導する。

 

「さ、こちらへ」

「……うむ」

 

 その瞬間、火矢が次々と放たれる。

 炎は徐々に燃え広がっていった。

 

「秀信……あとは任せたぞ」

 

 三郎は、本能寺の炎の中に消えていった。

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