第123話 東の決着
「どうやら、関ヶ原で行われた決戦は幕を閉じたようですな」
岐阜裁定が行われていた頃、秀信は上杉を下し、関東へと入る辺りで関ヶ原の結末を耳にしていた。
秀信は前田利長から報告を受けていた。
「うむ、上杉は降伏した。残るは、関東攻め」
「奥州へ攻め入るというのも手ですぞ。南部や最上は降伏したわけではありませぬからな」
丹羽長重の言葉に秀信は頷く。
「うむ。そこについては策があると言う者がおりまする。入れ」
すると、秀信達の陣に如水と勘助が入って来る。
「は。黒田如水にございまする」
「……如水殿……ご自分の立場をわかっておられるのか?」
「前田様。余りそう申されますな。我等が関ヶ原へ向かわず手薄となった東へ攻め込めたのも如水殿たちの助言のおかげ。話を聞くくらいは良いでしょう」
秀信がそう言うと、皆は黙る。
「では、策を申し上げまする」
如水は続ける。
「まず、手薄になった奥州、関東を我らの手勢だけで攻めるには時間も兵も足りませぬ。そこで、現地の国人衆を蜂起させ、それらを支援致しまする」
「国人衆か……」
「ですがそれだけではありませぬ」
すると、勘助が出てくる。
「関東には徳川の家臣となった小田氏治がおりまする。常陸の不死鳥とまで言われた彼の者に旧領安堵と加増を申し出れば、必ずや食いつくでしょう。それに、北条氏の家系の北条氏盛が関東にはおり、小田原における北条家の再興を約束すればこちらにつくかと。旧北条家臣も靡くでしょうな」
「奥州の秋田氏は我らに靡く動きがあると知らせがありました。それに、秋田氏には名門浪岡家の生き残り、浪岡慶好殿がおりまする。浪岡家の再興を約束すれば、必ずや味方になるでしょう。現地でも多くの兵が集まるかと」
その他にも二人は多くの滅んだ大名に、旧領の約束をすれば必ずや味方してくれるだろうと言った。
すると、利長が反応する。
「しかし、それだけで勝てるのか?」
「そこには、この如水と勘助がそれぞれ当たり、現地で指揮を取りまする」
「皆様方には関東攻めを行ってもらいたいと思っておりまする」
勘助がそう言うと、秀信が頷いた。
「見事な策。私はそう思うが、他の方々はどうかな?」
「……異論はござらん」
利長がそう言うと、皆も頷いた。
「では、この如水は奥州へ行き、道中で伊達、佐竹、津軽等に協力を求めまする。最上や南部が素直に屈すれば良いのですが……」
「某はまずは北条に当たり、次に小田へ当たりましょう。頃合いを見計らって攻めてきて下され。」
二人は頭を下げ、陣を後にする。
「各々方。かの二人が信用ならぬのは分かりますが、ここはそれが最善かと」
「無論に御座います。我等は策の通りに関東攻めを行いましょうぞ」
かくして秀信達は東を押さえる事となる。
策の通りに北条、小田、浪岡等の助力を得た豊臣方は瞬く間に奥州、関東を押さえた。
というのも、関ヶ原の顛末を耳にし、豊臣方の大軍が迫っていると聞いた徳川方の所領を守っていた者達は降伏した。
しかしそれはまだ先の話。
秀信達はまだ戦を続け、まだ岐阜へは帰らない。
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