第67話 征伐軍 帰還

 九州征伐軍が大阪に帰ってきた。

 片桐且元が既に迎え入れる準備を済ませており、盛大に迎え入れられた。

 

「皆様方!良くぞ戻られた!九州征伐、さぞ疲れたでしょう。長旅の疲れも癒やして下され」

「片桐殿。かたじけない。ですが、某は申し訳ありませぬが、急ぎ岐阜に戻りとう御座います。では」

 

 三朗がそう言い、そそくさとその場を離れようとする。

 が、片桐は先回りし、頭を下げた。

 

「お、お待ち下され! どうか」

「か、片桐殿? お顔をお上げくだされ。何故そこまで……」


 三郎がそう言うと、片桐且元は顔を上げる。

 

「宇喜多殿、小早川殿が居らぬ今、あの方々を纏められるのは織田殿しかおりませぬ!」

「……毛利殿がおられましょう。長宗我部殿も充分に役目を果たしてくれましょう」

「……毛利殿は此度の戦、然程活躍しておらず、発言力が低いのです。長宗我部殿もあまり……豊久殿は島津の名代であまり……。それに、織田殿は所領を多くは望まず、茶々様や北政所様も頼りになさっておりまする。どうか!」

 

 宇喜多秀家は征伐軍が宇喜多領に攻めかかる直前に降伏。

 秀家は捕らえられ、大阪へ連れられていた。

 その他の途中で豊臣に味方した諸将も、共に大阪へ来ていた。

 

「……わかり申した。ですが、某も織田の名代。あまり期待はしないで下され」

「あ、ありがとう御座いまする!」

 

 片桐且元と共に皆が集まる場へ通される。

 そして、小早川秀秋の座っていた箇所に案内される。

 それが意味する所を、三郎も理解していた。

 三郎は少し戸惑いつつも、そこに座った。

 そして、間もなく茶々と秀頼が現れた。

 皆が頭を下げる。

 

「面を上げよ。」

 

 茶々のその一言で頭を上げる。

 

「此度の征伐、大儀であった。所領や処遇については……織田殿」

「は!」

「あなたに全てお任せ致します。あなたは石田三成殿や小早川、宇喜多殿に代わり、秀頼の良き支えとなってもらいたいのです。……毛利殿、長宗我部殿、島津殿らも、異論は無いようですし」

 

 毛利らが頷く。

 皆の視線が三郎に集まる。

 

「では、後の事は任せましたよ? 且元。仔細は後で聞きます」

「はは!」

 

 茶々と秀頼がそれだけを伝え、その場を後にする。

 そして、三郎はすぐさま皆に頭を下げた。

 

「この度の戦。勝つ事が出来たのは皆様方のお陰! 誠にありがとうございまする!」

「……三郎殿。お顔をお上げくだされ」

 

 毛利輝元が口を開く。

 

「此度の戦で勝つ事が出来たのは、間違いなくそなたのお陰。堂々とすれば良かろう」

「そうだ。まだまだ若いというのに、凄いものだ! なぁ、豊久殿!」

 

 長宗我部の言葉に豊久は頷く。

 

「ええ。生駒殿、蜂須賀殿、龍造寺や藤堂、加藤等、名のある将が三郎殿のお陰で豊臣方についたのだ」

「左様。我等、龍造寺が再興出来たのも全ては織田殿のお陰このご恩は忘れることはありませぬ」

「その席に座らされたということは、そういう事。そなたは今、五大老である我が毛利よりも厚い信頼を寄せられておるのだ。覚悟をお決めなされ」

 

 毛利のその言葉に、暫く考え、三郎は頷く。

 

「……わかり申した。ですが、あくまで某は我が兄秀信の名代。その代わりになるつもりはありませぬ。その事を忘れずにおいて下され」

 

 三郎がそう言うと、皆が頷いた。

 

「では、論功行賞に移りましょう。熊本で話し合った事を細かく決めましょう。まずは、宇喜多殿や黒田に味方した諸将の処遇について……」

 

 皆の意見もあって、三郎がその場を取り仕切って論功行賞を進めた。

 この一件から、織田家の地位は上がっていく事となる。

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