第18話 死霊術




「一体どうやって倒したのか……。教えてくれるかな?」


 出てきたのはフードの……女?

 声は女の声に聞こえる。


「お前は一体誰だ?」

「あぁ、私かい? 私は……ネクロ。ネクロと呼ばれているよ」


 その言葉を聞いてリータは青ざめる。


「ネクロ!? 七邪導師グリモアの一人じゃないか!!」

七邪導師グリモア?」


 何だその典型的な強そうな敵の組織。


「世界中で指名手配されている七人の魔導師だよ! それぞれが禁術と呼ばれる魔法を使う危険な奴らさ。ネクロは死霊術を使うと言われているよ」


 死霊術。

 だから亡霊君主テラーロードか。

 ネクロマンサーのネクロなのか?


「どうやら自己紹介は必要ない様だね。君の言う通りだよ。さて、次は君の番だよ転生者。君の能力は……何なんだい?」


 奴がそう言った瞬間、

 キーンと言う耳鳴りがして身体がこわばる。


「教えてくれよ。ね?」


 奴は俺に近づいて耳を指でなぞる。

 そしてささやくように俺に言う。


 だが、優しさなど微塵に感じない。


 断れば『死』

 それを強く突きつけるささやきだ。


「ふふふ。怖がる必要はない。……だが、君が教えてくれなくても良いんだ。私のモノになればなのだから」


 絶対的強者。


 今まで、恐怖を感じたことも、

 抗えない力の差も感じたことも勿論ある。


 だが、これほどまでの絶望を俺は知らない。


「……さぁ『教えてくれない』でいいのかな?」


 何か無数の手が俺の足から

 登ってくる感覚がわかる。


 死ぬ。


「ふふふ。じゃあ……」


 殺される!!


「さようなら」

「……お前がな」


 刹那。

 知らない男の声が聞こえた。


「っははははは! やはり君がくるか! ごきげんよう、バルムンク!」

「別れの挨拶はそれでいいか?」


 ネクロはすんでのところで避けるが

 バルムンクと呼ばれた男は止むことなく切りつける。


 だが、ネクロが手をかざすと、

 バルムンクの足が動きが止まる。


「ふふふ、君が出てくるとあれば面倒だ」

「こちらの台詞だ。貴様らグリモア以上の面倒を、俺は知らん」


 そう言ってバルムンクは地面に剣を刺す。


 目を開けてられないほどの光が

 バルムンクを中心に広がった。


「……ちっ、逃したか」


 バルムンクは剣を鞘にしまい、

 俺のところへと歩いてきた。


「お前は何者だ。ここで何をしている」


 バルムンクは今使った剣とは

 別の剣を俺に突きつける。


「答えろ。でなければ今すぐ殺す」


 本気の目だ。


「三つ数える。三……二…………」

「ま、待ってくれ! その人は転生者で、どうやら今日こちらの世界に来たみたいなんだ!!」


 リータがすんでのところで止めてくれた。


「転生者だと?」


 そう言って、奴は俺の左手を乱暴に掴む。


「なるほど。転生者というのは間違いない様だ。だが、七邪導師グリモアと繋がりがない証明にはならん」


 鋭い目つきで俺を睨むバルムンク。

 そんな時、遠くから声が近づいてくるのがわかった。


「………様ァ〜! バルムンク様ァ〜〜!!」


 現れたのは数十人の兵士の軍団。


「こ、困りますよ! 勝手に行かれてしまっては!!」

「貴様らが遅い」

「万が一、その身に何かがあったら一大事ですぞ!」

「俺に勝てる奴がいるなら、貴様らがいても何の役にもたたん」

「ですが……!!」

「くどい。お前らコイツを連行しろ。転生者だ気をつけろ」

「「「はっ!!」」」


 そうして俺は兵士らに捕まる。


 俺はその辺の兵士に

 バルムンクのことを聞く。


「ったた!! ちょっとは優しくしてくれないか? ……こんな時に聞くのもアレだけど、バルムンクって奴、何者なんだ?」

「はぁ!? お前まだきたばかりなのか!?」

「……あぁ、まぁそうなんだが」


 そんなに有名な奴なのか?


「いいか? よーく覚えておくんだぞ」


 兵士はそう言って俺を連行しながら言う。




「バルムンク様は王子だ。そして、七聖剣王レガリアの一人でもあらせられる。グラム王国 第二王子で『正義之王グラム』であられる。よーく覚えておけ!」

 





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