第15話 勝とう。君と僕とで!




「リータ、参上だよ!!」

「どうして!?」

「話は後だよ!」


 そう言ってリータは杖を構える。


 確かに勝負はついちゃいない。


 確かに炎は亡霊君主テラーロードにダメージは

 与えたことだろう。


 だが、奴は倒れていない。

 馬は崩れる様にしてただの骨となったが、

 奴は炎の中でも毅然と立ち尽くしている。


 そして、奴は手をかざす。


「来るよ!! 横に飛んで!!」


 リータの声で俺は訳も分からず横へ飛ぶ。


 亡霊君主テラーロードの手から放たれるは

 炎の火球。つまりはフレアアローだ。

 だが、リータの物より大きい。


「うわぁ〜。やっぱりすごいね! こんな敵、僕には正直早すぎるよ〜」

「そうなのか?」

「うん! トパーズランク、低くてもエメラルドランクの敵だね! サファイアの僕じゃ話にならないよ」


 俺は、一瞬何のことかわからなかったが

 それは左手の甲の話だと推察する。


「でも、可能性があるとしたら君だよ!」

「俺? 虹色だからか?」

「うん! 転生者は誰でもオーバーランク! 実際、本来ならサファイアからエメラルドに上がるための突破試験であるバームダインをソロで倒したわけだし! レベル1でね?」

「それで、君たちはダイン鍾乳洞に行ってたのか」

「そうなんだよ。まぁ、まだ申請してないから僕たちはサファイアのままだけれどね!」


 なるほど。

 突破試験とやらを楽にクリアできると

 思っていたわけか……。


「それで、君がここに来た理由は?」

「僕は感動したのさ! やっぱり転生者ってすごい! って。レベル1で、装備もなくて、ステータスジュエルすら知らない人がだよ! 僕達三人でも勝てない様な敵を一人で倒すんだ!」

「あれは……」

「しかも、どれだけボロボロになってもだよ。君は最後まで諦めなかった!! 動かないはずの身体を気力で動かしていた!! 僕は君に見惚れてしまったよ!」


 俺がすごいんじゃない。


 俺が俺のままだったら逃げてたし勝てなかった。

 たまたま運が良かっただけだ。


 実際、俺は殺される気だったし。


「たわわもナギサも君の凄さをわかっていない! けど僕は君の凄さを知っている! だから……僕は君について行くことにしたのさ!」

「リータ……」

「さぁ、君の指示を聞こう! 僕にまた、君の凄いところを見せてくれ!」


 目をキラキラと輝かせて、

 リータは俺を見上げる。


 ……俺は大した奴じゃない。


 このスキルが俺を生かしただけだ。

 俺自身は何もしていない。


 でも。

 それでもだ。


 危険とわかっていても俺のところへ来てくれた。

 

 バームダインより強い敵だというのに、

 今も逃げようとしない。


 ……俺は誰かに期待されたことがない。

 

 子供の頃は、親が期待してくれてたかもしれない。

 でも、いつの日かそれすらもなかった。


 だけど、リータはそんな俺に期待してくれている。


 ここで変われなきゃ、いつ変われるんだ?

 変わりたい! 変わるんだ!!


 アイツに勝つことで、俺は、俺を超える!


「リータ。俺がアイツに触れることが出来たら、恐らく勝てる」

「おぉ、君のスキル『IT』って奴だね!?」

「そうだ。触れるだけで良い」

「わかったよ! 僕は君に人生を賭ける覚悟で来ているからね! 一蓮托生さ!」


 そう言ってリータは杖を振り上げる。



「勝とう。君と僕とで!」



 その姿に俺は何かを写していた。

 ……負けられないな。



 俺もダインスレイヴを掲げる。



「悪いな、亡霊君主テラーロード。お前に恨みはない。だが、俺はお前を倒す!」




 さぁ、コーディングを始めるぜ!





 

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