第10話 思考実験は大事





「おぉ、サワラ! しんでしまうとはなさけない!!」

「は?」


 俺の前には怠惰な青髪女神がいた。


「あれ、あれあれ!?!?」

「いや、だから。貴方は死んでしまったんですって」

「えーと、もももちゃん買いに行く途中に? 今までの夢!?」


 どういうこと?

 一から始めましょう。いいえ、ゼロから!

 みたいな世界線だったの!?


「はぁ。何言っているんですか? あなたはダイン鍾乳洞でトカゲの魔物『パームダイン』に殺されたんですよ」

「……えぇ!? 俺アイツ倒したよ!?」


 夢じゃないのなら確かに槍で脳を貫いたはずだ。


 何? アイツ心臓いくつかある系?

 魔人族か何かだったの??


「確かにパームダインは倒しましたが、瀕死の状態であれだけ動き回ったんですから死にもします。イメージできないでしょうけど、体内で折れた骨が内臓をめっちゃくちゃにしてるんですから」

「……なるほど?」


 確かに絶望的痛みだった。

 正直、二度としたくない。


「……で、なんで俺ここに居るの?」

「貴方はまだ初心者の守護がついてますから。転生後、七十二時間の間は何度でも生き返ります。それ以降は知りません」

「なにそれオンラインゲームの救済処置みたいな感じか」

「黙ってもらってていいですか?」


 目も合わせず女神は言う。

 コイツずっと髪の毛見てやがる。

 くるくるすんな! かわいいけど!!


「いや、まさか死に戻りが出来るとは……」

「もう来ないでほしいです。仕事が増えて迷惑なので」

「なんかすみません」

「というわけであなたを復活させます」

「じゃあ、またあの草原から?」

「そうですね。では、いってらっしゃいませ」

「はやい! 色々聞きたいことが!!」


 有無も言わさずすべてが消えていき

 再び味わう浮遊感。

 白い部屋へとまた落ちる。


 俺は渋々と階段を下りる。


「ったく。あの女神本当可愛いからって……」


 でも好き。

 可愛いんだもん。


 とかくも俺はまたグリードア〇ランドの

 始まりのような建物から草原へと降り立つ。


 さて、どこに行こうか。

 当たり前だが、あてはない。


「ん~。風に任せるかぁ」


 俺は適当に歩くことにした。




 俺は道すがらに色々なフローチャートを考えていた。


 一度考えたことがあるっていうのは、

 プログラム作成において非常に大事だ。


 大体のことは何かの組み合わせで何とかなる。


 ただ、その組み合わせるための

 『材料パーツ』がなければ何も生まれない。


 ゆえに色々な思考実験が大事ってわけだ────




 数時間歩き、日が傾いてくる。

 ……街なんてどこにもない。


 今日は野宿?

 したことないのだが?


「一応、街道みたいなの見つけてそれに沿って行ったつもりなんだがなぁ」


 誰に言ったわけでもない独り言をつぶやく。


 ──グゥ。


 お腹もなる。

 風来のシ〇ンで満腹度が二十を切ったのに

 おにぎりがない時の気分。


 リアルだとこんなに不安になるんだな……。


 この街道をどちらかに行けば、

 必ずどこかには辿り着くはずなのだが。


 問題は進むか、引き返して逆に行くか。


 ……考えても仕方がない。


 俺は今まで進むことを避けて逃げて来たんだ。

 こんなしょうもない二択くらいはせめて進もう!!




 俺は今来た道を戻ることなく、

 ただただ進む道を選ぶことにした。




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