第9話 コーディングを始めるぜ
俺は奴を倒すフローを脳内で描く。
知識だけは十分ある。
俺がアニメをどれだけ見たと思ってんだ!!
まずは落ちていた武器の整理だ。
剣が数本、そして槍が二つ。
なら……、オブジェクト:『槍』だな
そして、変数の指定。
変数:『クソトカゲの顎の長さ』『槍の長さ』
『俺とクソトカゲの距離』『状況』
数本の剣は欠けていた。
もしかしたらアイツの皮は固いのかもしれない。
なら、王道だが槍で突く方が良い。
いつもの俺なら出来ないだろう。
ビビッて引いて殺されるんだろう。
だが、プログラムは俺に必ず実行をさせる。
ビビりで意志が弱くて、
すぐ諦める俺でも実行させることが出来る!!
「さぁ、クソトカゲ。コーディングを始めるぜ」
まずは多数分岐であるスイッチの作成だ。
俺の状態を『状況』とする。
『状況』が『クソトカゲ』が『俺』に近づき、かつ尾で攻撃をするとき。
『俺』は『クソトカゲ』から
『クソトカゲの尾の長さ』+五センチの距離をあける。
『状況』が『俺とクソトカゲの距離』が三メートル以上、かつ『何も持ってない』なら
『俺』は『槍』を取得しに行く。
『状況』が『槍』を持たず『俺とクソトカゲの距離』が三メートル未満なら
『俺』は『クソトカゲ』から距離を取る。
『状況』が『俺』が『槍』を取得しており、かつ
『クソトカゲ』が『俺』に噛みつこうとしたとき。
口を開けた『クソトカゲ』の口内に槍を突き刺す。
「さぁ、実行だ!!」
世界は動き出す。
『クソトカゲ』の嚙みつきに対し、
『槍』を持たず『俺とクソトカゲの距離』が三メートル未満の俺は
『クソトカゲ』から走って距離を開ける。
すると自動で俺は『槍』へと走り出すことになる。
三メートル離れたからだ。
『クソトカゲ』がこちらを向いて走ってくる。
が、幸いなことにのろまものろまだった。
あっさりと『槍』を拾う『俺』
警戒しているのか距離が開いているのにもかかわらず、
尾をぶんぶんと振り回している。
だが、条件として
『状況』が『クソトカゲ』が『俺』に近づき、かつ尾で攻撃をするとき
と書いた以上『俺』が動くことはない。
そして、どの分岐条件にも当てはまらない『俺』は
俺の意志で歩みを進める。
痛みにも慣れてきた。歩く方がむしろ痛くない。
『クソトカゲ』も『俺』めがけて進み近づいてきた。
すかさず『俺』へと尾を振り回す『クソトカゲ』
だが、その攻撃が俺に触れることはない。
何度も。
何度も何度も俺を攻撃する。
しかし、そのすべてはかろうじて当たらない。
全てが五センチという間隔をもってして避けられる。
「お前の攻撃はあたらねえんだよ雑魚!」
言葉が通じるのかわからないが、
馬鹿にしたのは伝わったのだろう。
『クソトカゲ』の目が変わる。
『クソトカゲ』は真っすぐ俺へと突進して口を開ける。
そして俺の頭へとその口を近づけ……
俺は口内に槍を鋭く突き付けた。
────グシャリ。
初めて聞くような気持ちの悪い音と感触。
その重さと自分の加速度をのせた『クソトカゲ』のエネルギーは
『俺』の突き出した『槍』が『クソトカゲ』の内側から
頭へと突き破る為の力となった。
ゆっくりと、だが加速を増しながら、
『クソトカゲ』は倒れる。
人生でこんな達成感を味わったことはない。
ずっと笑われて、
諦めて、
勝利という言葉とは無縁で。
だけど、だけど。
「俺の……勝ちだな」
無意識に出る言葉。
無意識に出る涙。
そして、俺はゆっくりと倒れ。
意識を失った。
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