第2話:不思議な彼女
新年度初のゼミナールが幕を開く。席順に自己紹介が行われ、万真の左隣に座る彼女まで順番が回ってきた。
「初めまして、
万真や有弥他何人かそのまま在籍する
次は万真の番だ。
「このゼミにそのまま在籍することになりました、野木万真です。初めましての人たちは初めましてです。半分ぐらいの人たちはご存知のことですが、1学年上にいる姉とともに青城に通ってます。同じ経済学部なのでお見かけすることあるかもしれません。これから、よろしくお願いします!」
最後に有弥が挨拶し、自己紹介は一通り終わった。
ゼミナールが終わり解散になると、突然美玖が声をかけてくる。
「あの! 野木くんのお姉さんってどんな人なんでしょう?」
びっくりして声を失う万真の代わりに有弥が代理で答える。
「双子みたいな顔立ちだからすぐ分かるぞ? こいつの姉貴とはたまにしか会わんが本当に仲良し姉弟だ」
「はぁ……有弥余計なこと言うな。まあ、有弥の言う通りだ。それ以上でも以下でもねぇ」
「そうなんだ? 教えてくれてありがとう。また来週ー!」
美玖は足早に帰っていった。
「はぁ、あの子距離感バグってんな……」
「ああ、そうだな……。万真、これから部活だっけ?」
「ああ。じゃあここまでだな。また明日な、有弥」
その後万真が部室に入ると、新入生と思われる女の子の双子がいた。これで全員集合のようだ。
「「よろしくお願いします!!」」
体験入部でやってきた新入生の双子は、
念願の複数人入部に向けて、万真は那奈に、翔太は仁奈に付きっきりでカメラの使い方を熱心に指導する。これが叶えば、自分の時以来の複数人入部になると万葉は張り切っていた。
「もう1人いたんだけど、すぐ辞めちゃったんだよね――」
万真の入部当初姉はそう言っていたが、これ以上過去のことを語ろうとしなかった。だから万真は、この時からずっと、首を突っ込むことはしなかった。
この日の部活が終わり、あとは帰るだけだ。那奈と仁奈が先に帰ってから。
「手ごたえはありそうだね、2人とも?」
「おう!」
「はい! 2人とも、終始楽しそうでした!」
3人揃って大学を後にする。先輩方が卒業し不安だらけの日々だが、自分たちの力で、新たな道を切り開くであろう――
☆☆☆
約1週間後。那奈と仁奈が正式に写真部に入部することになった。双子が加わってからの部活までまだ日数があるが、3人で喜びを分かちあった。
「あ、翔太先輩、ですよね? 入部届、出しました! これからは写真部の一員として、よろしくお願いします!」
「仁奈もです! よろしくお願いしますっ!」
今朝、翔太が教養学部の玄関にて那奈・仁奈とばったり会ってこう挨拶してきたのだそうだ。部活は順調でも、半分も人が入れ替わったゼミの方はどうだろうか。
本格的に講義が始まり、2回目のゼミもやってくる。翌週の3回目も、万真の左隣には美玖が座り、完全に定位置になってきている。特に変わった様子はないのだが、
(不思議な女だなぁ……)
万真からすれば、自分の何が興味津々なのか訳が分からなかった。
そして翌朝、万真はあの日が夢の中で蘇り、飛び起きた。2限目から行くのにはまだ時間が早過ぎる。
(まさか……神様は姉ちゃんのように当たって砕けろって言うのか――?)
姉に恋愛感情を持ったことは否定しない。だが、姉弟の関係にヒビを入れたくないとの思いから、秘めた胸の内は心にしまっておいたままだった。
――そのぐらい、一大事なことなのだ。
姉はこの日1限目から行くため、先に出発する。二度寝はできないと悟った万真は朝食を食べようとリビングに降りてくる。
「おはよう万真。珍しい、早起きだね」
姉はいつもと変わらない。先に家を出ていく姿を見て、どこか寂しい表情をしながら支度をするのだった。
いつもと変わらないはずだった姉がこの日の部活にて、予想だにしない発言をする。
「5月の連休で1泊2日の親睦会を行います!」
それは突然の発表だった――
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