第54話 新たな依頼

 翌日、俺たちは冒険者ギルドの応接室に呼ばれていた。


「依頼?」


 ヴェルトスさんから告げられたのは仕事の話だった。


「ああ、今回はドゥルガの森の解放についての依頼だ」


 ドゥルガの森の解放。主が居なくなったドゥルガの森は魔物が自然に生まれなくなった。とはいえ、魔物同士で繁殖をしていくため、放置していると無限に増えていくわけだが。解放っていうのは残っている魔物を狩りつくりし、完全に人間の領地に使用という話だ。


「なぜ解放に私たちが?」


 アンナの疑問はもっともだ。もともと解放には参加しないって話じゃなかった?


「もともとは冒険者ギルド内で終わらせようと思っていたのですが……。あまり参加者が集まらず、このままだと始められないのです」


 ヴェルトスさん曰く、この時期の冒険者は稼ぎ時で、あんまり人が集まらないのだとか。


「それで私たちに白羽の矢が立ったというわけですか」


「その件で非常に言いにくいのですが……今回はアンナさんとルリアーナさんだけに依頼をしたいのです」


「「私(あたし)だけ?」」


 え?俺は?


「というのも、流石にカルラさんまで参加してしまうと、国家戦力の私的利用と疑われるのです」


 遺跡の依頼に私情を挟んでた時点でみたいなところはあるけど、一応冒険者ギルドの面子的に良くないらしい。まあ、遺跡の攻略は国の事業としてカウントされてそうだし、今回はダメなのかな。


「期間は短くて三日、最長で五日を予定しています。お願いします」


 あれ、ほんとに俺は何もないの?もしかして一人で行く感じ?


「カルラさんに関しては別のことを用意してるので安心してください」


 あ、俺にもすることがあるらしい。よかった、二人が頑張ってるときに俺一人くつろいでるのなんか申し訳ないし。


「その件については魔術ギルドに行って聞いてください」


「わかりました。では、失礼します」


 俺たちは冒険者ギルドから出て、その足て魔術師ギルドへと向かった。それにしても何をすればいいんだろう。


「そういえば、二人は先に帰ってていいよ。行くって決まったなら準備とかもあるだろうし」


「そうね。今日夜出発らしいし、準備も必要ね」


「じゃあ、ここからは別行動だね。頑張ってね」


「二人もね」


 俺たちはお別れし、魔術師ギルドへと入った。


「ようやく来たか、カルラよ」


 魔術師ギルドに入ると、アルノルトさんが出迎えてくれた。


「要件って何なんですか?」


「先日お前たちが出てきた遺跡があっただろ?あそこの書籍をうちの学者たちと整理してほしくてな」


 なるほどね。あそこの本たちは結構興味があるし、結構楽しそうかも。


「おぬしの仲間である二人は別の依頼で離れるんだし、ちょうどいいじゃろ」


 う、痛いところを突いてくる。まあ、確かにあんまりすることは決まってなかったしちょうどいいかもしれないな。


「いつから行くんですか?」


「今からじゃ。こういうのは早い方がいいんじゃ」


 えぇ……。行動力が師匠と同じレベルだ。この人と師匠はすごく仲がよさそう。


「というわけで行くぞ。『テレポート』」


 俺たちは光の粒子に包まれ、転移した。光が晴れると、あの遺跡の前にいた。


「アルノルトさんって、『テレポート』使えたんですか?」


「そうじゃぞ。お主と違って複数人運べる。その気になれば十人以上も運べるわい」


 それはすごいな。俺もできるようにならないとなぁ。


「それじゃあ、案内してくれ」


「あ、はい」


 俺はアルノルトさんを連れて、エレベーターのところまで向かった。


「ほう。これがえれべーたーってやつじゃの」


「そうです。ここを押すと扉が開いて……ここを押すと下に行けます」


「なるほどな。何はともあれとりあえず乗ってみることじゃな」


 エレベーターに乗り、下へと降りる俺達。エレベーターが動き始めると、エレベーター特有のちょっとした浮遊感を感じる。


「なんか不思議な感じがするの。これも興味深い物じゃな」


 距離が遠いのか、進むスピードが遅いのかはわからないが、最下層に行くまでおよそ四十秒ほどかかる。


 最下層に到着すると、チーンという音が鳴り知らせてくれる。


「ここが言ってた例の場所か……」


 ここから出た翌日にまた帰ってくることになるとは思わなかったよ。


「それじゃあ、手分けした本を読んでいくぞ」


「え?それだけですか?」


「他は種類ごとに分けたりする必要があるが……とりあえずここの本を用んでみたいのじゃ」


 アルノルトさんはいち早く本を読みたいとうずうずしていた。そう言えばこの人生粋の魔術オタクなんだっけ?


「それじゃあ、わしはこの部屋にいるから何かあったら呼んでくれ」


 そう言って、白骨死体のある書斎へと入って行った。バタンと扉の閉まる音がすると、この場所には俺一人しかいないということが嫌でも認識させられる。


 はぁ……。


「私も読むか」


 俺はここにいた時にずっといた書斎へと入った。あのエリシアが書いた本しかない書斎だ。ここのことエリシア書斎って呼ぼうかな。


 とりあえず、魔法に関係しそうなものを片っ端から読んでいくか。


 俺はまず手始めに、棚の上の方にあった『魔法の根本的原理とは』という本を手に取り読み始めた。

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