第50話 帰宅
あのあと、エレベーターに乗り地上に上がった俺たちはなぜかいた師匠に抱き着かれた。師匠が泣いてる姿、初めて見たよ。その顔を見て心配かけてしまったんだなと思う。師匠が落ち着いた後、俺たちは一旦家へと帰った。本当はそのまま冒険者ギルドに行く必要があるのだけど、何分これだけお風呂に入ってないとね……。さすがに嫌だったからお風呂に入って軽く洗濯とかをするために家へと帰ったんだ。
「で、なんで師匠もいるの?」
「いいじゃない。久々に弟子に会えたんだから。知ってる?巷ではあなた達死んだと思われてるのよ?」
湿った髪を撫でながら師匠は衝撃的なことを言った。
「そうなの?!」
「まあ、一週間も行方不明になってたらね……」
「死んだといわれても否定できないかもしれないわね……」
そう言われればそうかもしれない。それでもひどいとは思ってるけど。
「でも、そんな中でも師匠は私たちのことを探してたんでしょ?」
エレベーターから出た時、すぐそこに師匠はいた。しかも、服は土や埃で汚れていた。直前まで遺跡の中を探索していた証拠だ。
「いや、ただ異変感じて行ってみたらいただけだけどね」
師匠は眼を逸らしながら言った。これは嘘をついてる時の反応だな。
「……ありがと」
俺たちは死んだと言われていた。実際死んでもおかしくないことはあったし、行方不明になっていた時間的に死んだと思われていても仕方がなかった。遺跡探索中に仲間が死んでしまうなんてことは冒険者ではよくあることだ。それでも、師匠は諦めずに俺たちのことを探し続けたいた。しかも、師匠のことだから毎日探してくれていたのだろう。
「……こちらこそありがとうよ。生きてくれて本当に良かった」
師匠はそう言って大きく息を吐いた。
「それで?あの後何があったの?」
まあ、そういう話になるよね。俺はルリアーナとアンナと目を合わせ、頷く。
「この話は長くなるよ。まず……」
それから師匠に、俺たちの経験したことを話した。あまりにも長すぎるため、途中からお風呂を出てリビングでくつろぎながら話した。最初きお失っていたことから始まり、機転を利かせてロボットの大軍を撃破し、謎のギミックを解いて、最後は死ぬ覚悟で魔法を打ってドラゴン型固定砲台を倒したことを説明した。もちろん、一回死んでしまったことは伏せたけど。
「そんなことがあったのね……。ほんと、よく生きて帰ったきたものよ」
俺もそう思う。
「そう聞くと、なんであたし達って帰ってこれたんだろうね」
「カルラのおかげじゃない?」
「いや、みんなのおかげかな」
実際、俺一人だったら諦めてた。しかも精神も持たなかったと思う。最初のロボットだって、最後のドラゴン型固定砲台だって、三人で役割分担してやっとどうにかなっていた。
「だから、だれか一人でも欠けていたら無理だったよ。この三人だったから行けたんだ」
俺はしみじみと行った。
「そのドラゴン型固定砲台?を倒したあと、どうしたの?」
「あの後も大変だったよね。敵はいなかったんだけどさ……」
出口は見つからないのに白骨死体は見つかるし、書斎にあった本の魔法は使えないし、一時はどうなるかと思ったよ。結局帰る手段となったエレベーターだってルリアーナが木箱の山を崩さなければ見つからなかったわけだし。
「遺跡の仕組みといいそれといい、あのアルバートって人はほんとに性格が悪いと思うんだよね」
「アルバート?」
師匠が不思議そうな顔で聞き返してきた。
「知ってるの?」
「知ってるも何も有名な人じゃない?いろんな遺跡に名前が残ってる古代文明時代の有名人よ。冒険者学校でも習ったはずなんだけど」
あー、歴史苦手だからなぁ。まともに受けてなかった気がする。
「ルリアーナは……まともに受けてないか」
「ひどくない?!実際歴史の時は寝てたけどさぁ」
「……私も寝てた」
「え、アンナも寝てたの?あたしと同じだ!」
決して喜ぶことじゃないと思うけどなぁ。ともかく、俺達三人の中に、歴史の授業をまともに受けてた人がいなかったわけだ。そりゃ誰も気が付かないよ。
「あなた達を冒険者学校から卒業させたのは間違いだったのかもしれないわね……」
師匠は額に手を当てながらそう言う。まあ歴史ぐらい覚えてなくてもいいと思うけどねぇ。
「そう言えば、白骨死体を見つけたよね?」
「見つけたけど……それがどうしたの?」
「それってさ、アルバートっていう人のものだと思う?」
「……思う」
というかそれしかないだろう。手紙持ってたし。
「ああ、たぶんその白骨死体はアルバートの物じゃないわよ」
「え?」
アルバートの物じゃないならいったい誰の物なんだよ。
「というのも、アルバートが作ったとされる遺跡は数多くあってね。その多くに白骨死体が置かれてるの。だからおそらく今回のもそれの一環ね」
……性格だけじゃなくて、趣味も悪いと思う。
「さて、そろそろ休憩も終わったでしょ。洗濯とかも済んだだろうし」
俺たちがこうして話してるのは、洗濯と装備の手入れをする必要があったからだ。実際、話していた時はずっと装備の手入れをしていた。
「そうだね、もう十分ぐらいかな」
いい感じにメンテナンスは終わったし。俺たちは私服から、冒険者の装備へと着替える。
「それじゃあ、冒険者ギルドに行くわよ」
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