第47話 魔法
これで三回目?四回目?それぐらい階段を下りて言ってるけど、結構地下深くまで下りた気がする。酸素が薄くならないのはこの遺跡が特別だからかな。
降りていくと、やがて大きな広間に出た。ここには扉もなく、大きな部屋のようになっていた。
「ここは……」
まるで館のエントランスのような場所だった。この広間には何個か木製のドアがあり、それぞれが別々の部屋へとつながっているようだった。
「あ、ここに看板があるよ!」
ルリアーナが指を指した先には木製の看板が地面に刺さっていた。
「何々……『君たちは私が用意した試練を全てこなしてくれたようだね。一体どんな軌跡があったのかは私は知らない。どうやって攻略したのか、どれぐらいの日数で終えたのか、君たちが今君
「「「……」」」
一体何者なんだ?なんかなぁ。自主的に来たんなら喜びもあるんだろうけど、勝手に連れてこられたからなぁ。複雑。何ならこの上から目線に腹立つ。
「そう言えばどうやって帰るのかしら」
「「あ」」
そうだよ!帰る方法がないじゃん!どうすんのこれ!
「とりあえず、何かあるか探してみようか」
俺たちは各部屋に分かれて色々調べることにした。
俺が扉を開けると、少し埃っぽい風が通り過ぎていった。俺の入った部屋は書斎の様だ。壁一面に本棚が敷き詰められており、部屋の奥には机といすが置いてあった。恐らく本をそこで読んでいたのだろう、机の上には十数冊の本が積み重なっていた。
「『魔法陣のススメ』『魔法の根本的原理とは』『第一次魔導書』……全部魔法関連の本かな」
しかもすべて著者が統一されている。著者の名前はエリシアっていうらしい。古代文明時代の有名な人なのかな。
ひとつ読んでみるか。俺は『第一次魔導書』を手に取って開いてみた。長らく放置されていたからか、本の上には埃が積もっており、開くときにも埃が舞った。
にしても埃っぽ過ぎる。俺は風魔法と水魔法を併用し、空気を循環させながら埃を湿らせ一か所へ集めることにした。その魔法を稼働させながら本を読んでいく。
本の内容はタイトル通り、魔法について書かれているみたい。それにしても今の魔法と全然違う。この本に書かれている魔法は詠唱がほぼ必須なようだ。
「なになに……フロガ・エナ・ヘーパイストス、彼の者に火を付けよ。アナマティア」
本に書かれた通り詠唱してみたが何も起こらなかった。何かコツなどがあるのだろうか。なんでも、この時代の魔法は詠唱が何個かの意味に分かれているらしい。特に最後の『ヘーパイストス』っていうのは魔法に関わる存在……俗にいう神のことらしい。俺はこの神を知らないし、神を信じることもないからそれが原因なのかも。
他にも魔法の説明がされていた。全てを試してみたが、やはり何も起こらない。俺には才能がないのかな。よくわからん。
とりあえず『第一次魔導書』は棚に戻し、別の本を読んでみることにした。
「これ気になるな……」
俺が手に取ったのは『魔法の歴史』という本だった。これを読めば古代文明のことや魔法が分かるかもしれない。
その本によると、魔法はもともと人々の生活を便利にするものだった。火打石がなくても火が付けば便利、突然水が飲みたいときに水を飲めれば水筒を持ち歩く必要がない。空を跳べれば移動が楽。そのように、人々の生活が楽になるように魔法は開発された。しかし、そういうものはいずれ悪用されるようになる。
人々を助けるためだった魔法は、人々を傷つけるものとなった。やがて魔法が使える者は悪という考えになった。そこで一人の人間が立ち上がる。魔法を扱う者による、魔法を悪用するものを狩ることが始まったのだ。その過程で数々の魔法が生み出された。攻撃魔法や転移魔法もそのひとつ。
やがてその戦いは終止符を打たれた。その時には魔法を扱う集団は強大なものとなっていた。人々も魔法を認めるしかなくなってしまった。それが魔法の始まり。
今では攻撃魔法は存在だけしており、基本的に魔法は人々のために使われるものとなっていった。
「ふむ……」
本当に魔法の歴史だったな。魔法に関する何のヒントもなかったな。確かに魔法は強大な力だもんな。いずれ悪用されるのは仕方のないことだ。かのノーベルが開発したダイナマイトだって、もともとは人々のためだった。それが戦争に使用されていくようになったのは有名だが。今の世の中って魔法が悪用されることってあるんだろうか。……あるんだろうなぁ、俺が知らないだけで。
「カルラー。何か見つかった?」
いつの間にかルリアーナが部屋に入ってきていた。
「いやなにも。ここには魔法関連の本しか置いてないよ。そっちはどうだったの?」
「こっちも全く。私が入った部屋は研究室のような場所だったよ」
ここを出る糸口は見つからなかったようだ。アンナの方はどうだったのかな。
「アンナのところに行ってみようか」
俺がそう言ったのとアンナと思われる短い悲鳴が聞こえたのはほぼ同時だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます