第46話 魔法石

「すぅ……すぅ……」


 気が付くと、まだルリアーナとアンナは寝ているようだった。幸いにもあれ以上の脅威が迫ってくることはなかったようだ。とりあえずは安心できそうだね。


 若干マナが足りておらず、重い体を引きずりながらドラゴン型固定砲台のところへと向かった。少し試したいことがあるんだよね。


 俺は小さな炎の球をつくり、ドラゴンの方へ投げ飛ばした。ドラゴンに直撃した俺の火の玉は消滅することなく、軽くドラゴンの表面を焦がすだけだった。


「やっぱりか……」


 あの魔法を無効化する効果は素材の効果じゃなかったんだな。内部にそういう機構があるのかな。素材の効果じゃなくて助かったよ。素材の効果だったら俺は泣いてた。何にもできなくなっちゃう。


 それにしても、こいつらどうやって動いてるんだろ。中に魔法石が入ってるのかな。アンナが起きたら斬って確認してみよう。次はロボットの方を見てみる。ロボットの方は頭の窪んだ部分に魔法石がはめ込まれていた。光って眼のように見えていたのは魔法石だったらしい。ロボットにも魔法を当ててみたがやはり魔法を無効化する効果は消えていた。……一体だけ持って帰るか。残りは魔法石だけ回収しよう。


「よし!」


「何してるの?」


 魔法石を回収し終えると、アンナが声を掛けてきた。


「こいつらの動力源になっていた魔法石を回収しきったとこ。それより、体調はどうなの?」


「ん~少し体はだるいけれど、動けなくはない程度ね」


 アンナは腕を回しながら言った。


「あいつ、倒したのね」


「うん、二人のおかげでね」


 俺たちは頭に風穴の開いたドラゴン型固定砲台を眺める。ほんと、よく生き残って勝ったよ。


 ふと、背中に控えめな柔らかさを感じて身体がビクリと跳ねる。


「少しの間、こうしてていいかしら」


 アンナが後ろから抱きしめてきたようだ。なんで抱き着いてきたのか、とか突然過ぎない?とか思ったけど。そんなの全部飲み込んで。

 

「……いいよ」


 俺は前に回された手を握りながら答えた。彼女には彼女の思うことがあるんだろう。


「ありがと。……今は独り占めできるし」


「何か言った?」


「怖かったって言っただけよ。あんなのと対峙したんだから」


 アンナは背中に顔をうずめながらそう言った。


 大体数分ぐらいたっただろうか。


「あの、アンナさん?そろそろ……」


「そうね。ありがと」


 なんかね。うん。やっぱり慣れてない。寝てるときは良いんだけどさ。なんか感覚が違うよね。変にドキドキする。これがバレてないといいけど。


「そういえば、斬ってもらいたいものがあるんだけど」


 俺は思い出したかのように話し始めた。

 

「斬ってもらいたいもの?」


「そう。あのドラゴンの中に魔法石が入ってると思うんだよね」


「それを取り出すために斬れってこと?わかったわ」


 そう言うとアンナは剣を鞘から抜き、ドラゴンの腹の部分を斬り裂いた。あの硬い性質も魔法無効化と同じで効果が消えていたため、すんなりとアンナのドラゴンに突き刺さった。


 斬り開かれたドラゴンの腹からは、前回ドラゴンを倒したときに見たものと同じ大きさ程の魔法石が入っていた。しかもその魔法石の中にはまだまだマナが入っていた。そういえば、魔法石からマナって取り出せるよね?そう思い魔法石にてをかざすと魔法石に入っていたマナが粒子となって俺の身体に吸い込まれていく。


「何をしてるの?」


「忘れてたけど魔法石に入ってるマナって取り出すこともできるんだよね。だからそれを使ってマナを回復してる。アンナも手をかざしてみてよ」


 俺にそう言われたアンナも魔法石に手をかざす。するとアンナも同じように魔法石からマナの粒子を吸い取っていた。


 マナが回復したからだろうか、マナ不足による体のだるさが大分軽くなった。回復しきったわけではないけど、残りの分はルリアーナが起きてきた時用に置いておこう。


 それにしてもこれは良いな。魔法石ってマナのタンクみたいなものじゃん。帰ったらこの魔法石貰えないか聞いてみよう。


「はっ!ドラゴンは!?カルラとアンナは?!」


「負けてたらもうすでに死んでるでしょう。カルラは勝ちましたよ」


 今起きたルリアーナにアンナが説明していた。


「ルリアーナもマナを回復しなよ」


「そっか、魔法石のマナって取り出せるもんね!」


 覚えてたらもっと楽だったんだろうなぁ。まあ、今思っても仕方がない。


「いや~!マナが回復すると体の疲れもとれるね」


 マナがなくなると、どれだけマナが大切かが分かる。失って気が付くマナの大切さ。


「そう言えば、結局どうやって勝ったの?」


 ルリアーナがマナを吸い取りながら聞いてきた。


「それ、私も気になる」


「そうだね。実はさ、あのドラゴンの肌は……」


 俺は二人に向けてどんな魔法を打ったのか、どうやって倒したのかを説明していった。


「そんなことに気が付いてたんだ」


「よく観察してたわね」


「たまたま気が付いただけだよ」


「そのたまたまで勝てたんだからいいんだよ!」


 その後戦いの疲れを癒すかのように少し談笑した。

 

「よし、そろそろ行こうか」


 いつの間にか部屋の奥にあった扉は開いていた。もうこれ以上敵と戦うことはないことを願いたい。俺は扉の奥にある階段を下って行った。

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