第48話 一泊
「アンナ!大丈夫?!」
俺とルリアーナは悲鳴がした方へ駆けつけた。
「え、ええ。大丈夫よ。少し驚いただけだから」
アンナの目の前には白骨化した死体が椅子に座っていた。こんなの急に見たらびっくりするよな。この部屋も書斎かな?書斎が二つあるって……。いった何冊の本を持ってるんだ?
「ん?」
俺は白骨化した死体が一枚の紙を持っていることに気が付いた。手に取って開いてみると文字が書かれていた。経年劣化によって所々穴が開いており、文字が欠落している部分もあるが、読めないほどではないといった感じだった。
「手紙っぽいかな?ええと、『エリシア殿へ そちらの□□はいかがでしょうか。私は日々魔法の研究に労力を費やして□ます。あの出来事は非常に残念な□□だったと私は思っています。そちらは今何をしている□でしょうか。あなたの健康□願っています。 追伸 □□の□□化については原因が分かっていません。引き続き研究していこうと考えてます アルバートより』」
エリシアって名前、ついさっき見たような……。ああ、あの書斎にあった本の著者だ。この人――アルバートはエリシアって人と仲が良かったのかな。まあ、この本にもめぼしいものはなさそうだ。
「アンナは何か見つけた?」
「いや、私は何も見つけれてないわよ。その骸骨以外……」
ふむ……何もない?帰る方法がないってこと?
「あたし達はここに閉じ込められたってこと?」
ルリアーナは不安そうに言う。いや、そんなことはないはずだ。
「アンナの一部屋目って何だったの?」
時間的にこの書斎に来たのは二部屋目だろう。
「一部屋目は寝室だったわね。何人かで寝られるようなベッドとクローゼットやローテーブルが置いてあったかしら」
寝室か。どおりで二部屋目に行くのが早いわけだ。
「いったんご飯を食べて寝てから考えるのもいいかもね」
こういう時は一旦落ち着くに限る。慌ててたら本来見えたはずのものも見えなかったりするし。
「キッチンってある?」
「キッチンなら確かあそこにあるよ!」
ルリアーナが指を指した扉を開けてみると厨房が広がっていた。魔道コンロのつまみを回してみるとカチッという音と共に炎が出た。よし、使えるみたいだな。
俺はまな板と包丁、鍋、そして材料を取り出し料理を作り始めた。今度家で作ろうと思ってマジックバックに入れてたんだよね。作り始めて約一時間後、俺の料理は完成した。
「はい、カレーだよ」
一応皿まで持ってたことに感謝するべきだと思う。これも前買って放置してたものだったからなぁ。カレー粉は作り置きしてるし。あれ、どの料理にも使えて便利なんだよね。
俺はルリアーナとアンナの前に皿へと注いだカレーとパンを並べた。カレーのおいしそうな香りが部屋に充満する。二人は久々の温かい料理に感動していた。まあ、こんなところに五日?ぐらいいたらなぁ。精神的にも疲労してる。
「やっぱりおいしいよね、カルラのカレーって」
「そうね、お店でも出せるんじゃないかしら」
「そう言って貰えると嬉しいな」
実際、カレーは得意料理だ。前世では振舞う相手はいなかったけどな。ハハハ。いいんだ。今は二人が喜んでくれるなら。
ご飯を一通り食べた後、俺たちはお湯で濡らしたタオルで身体を拭いた。体の汚れが取れる感覚ってこんな感じなんだ。初めてだよ、こんなに長くお風呂に入ってないの。
「装備とかも洗いたいよね」
激しく同意するけど、洗剤とかは持ってきてないしなぁ。さすがになんでも用紙してるわけじゃない。
「あ、動物パジャマならあるよ?」
「え、ほんと?ならそれ着たい!」
もともと俺の部屋でパジャマパーティをすることが多かったから俺が洗濯してたんだよね。持っててよかったよ。
俺たちは動物パジャマに着替えて寝室へと向かった。
「それにしてもカルラってやっぱりキツネが似合うよね」
「そうかな?」
「うん!なんか神聖な感じが強くなった気もするし!」
神聖な感じが強く……か。一度死んで蘇ったのが関係してるんだろうか。結局あれは何だったんだ?なんで俺は生き返れたんだろう。
「カルラ?」
ぼーっとしてしまっていたようだ。
「ごめんね、ちょっと考え事してて。それより、早く寝ちゃおっか」
そう言っておれはベットに転がる。続けてアンナとルリアーナもベットに転がる。
「久しぶりだね、こうやって三人で寝るのも」
「そうね。思えば長い間この遺跡にいるものね」
約五日。体感でそうだから本来はもうちょっと経ってるかもしれない。戦いを終えてもなおここに閉じ込められ続けている。果たしてここから出ることはできるんだろうか。
猫の姿を模したパジャマを着たアンナがぎゅっと抱き着いてきた。彼女がこうやってでき着いてきたってことは寝るという合図だ。反対側からはルリアーナから抱きしめられる。二人はもうそろそろ寝るのだろう。俺は寝られるのだろうか。考えることが多すぎる。
特に気になるのは一回死んでしまったことだ。あれに関しては本当によくわからない。なぜ生き返ることができたのか。メタトロンが話していたのは何なのか。そして、最後に聞こえた声は誰のものなのか。何一つ、俺は理解できないままでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます