第43話 第二の部屋

「一体どこに行ったのよあの子達……!」

 オリヴィアは遺跡を周りながら呟いた。この二日間彼女は移籍のマッピングをしながら探し続けた。しかし、そんな彼女の努力も虚しくカルラたちの痕跡は愚か、あの魔法陣ですら姿を消していたのだ。

「もうしかしてあの子達はもう……いや、そんなことは無いわ」

 オリヴィアは自身の脳裏に浮かんだ最悪の結末を振り払った。彼女は今日も探し続ける。


 ――――――――――――

 コンクリートのような壁をした階段を一段一段降りていくと、再び広い空間へとたどり着いた。部屋に入ると、一つ前の部屋のように入ってきた扉は音を立てて閉まった。部屋の作りは先程全く同じで、入ってきた扉の向かい側に大きな扉があった。


 ただし、先程と違うのは部屋の真ん中に大きな機械(?)が置いてある事だった。


「なに、これ……」


 部屋の真ん中に置かれている機械はひとつだけではなく、複数個が組み合わさってできており、ベルトコンベアのようなもので繋がれていた。機械は今も稼働しており、ベルトコンベアの上には物品が絶えず流れていた。


 「これって……」


 ルリアーナがベルコンベアから取り上げたそれは、俺たちにとってものすごく見覚えのあるものだった。


「これは、あいつの顔……?」


 素材は金属でごつごつとした装飾をされており、真ん中に大きな窪みが存在してた。それは、ほんの数時間前に俺たちが戦ったロボットの頭だった。


 別のベルトコンベアを見てみると、腕や足、さらには胴体まですべてのパーツがここで製造されているようだった。最終的には最後の機械で組み立てられ、組み立てられたロボットは壁に空いた穴へと運ばれていた。


 この機械群はまるであのロボットの製造ラインのようだった。ここでひとつの疑問が生まれてくる。


 なぜここの製作者はこの部屋を作り、俺たちを入れたんだ?ここの創造者は最初から性格の悪い仕掛けをしてきた。なのにこの部屋はなにもされない。ただ部屋の真ん中に大きな機械群が設置されてるだけ……。本当にこれだけなのか?


 試しに部屋の奥にある扉を押してみるが開かない。ということは、この部屋はクリアされてないということだ。


 何がクリア条件なんだろう。


「ここになんか書いてあるわよ」


 扉付近を調べてたアンナが何かを見つけたようだった。駆けつけてみると、扉の近くの壁に何か文字が彫ってあった。


「何々……『汝ら創造者の力を逆転させ核を変質させよ』どういうことかしら?」


 意味ありげな言葉だな。間違いなくこの部屋を出ることと直結している。


「ひとつひとつの言葉の意味を考える必要がありそうだね」


「そうだね。『汝ら創造者』っていうのは私たちのことだよね」


「ということは、私たちの力を『逆転させる』ことが必要なのよね」


「「「う~ん……」」」


 三人寄れば文殊の知恵とはいうが、何も思い浮かばない。属性のことを言ってるのかな?あれとルリアーナは物理で、アンナは魔法で何かをするってこと?なんかしっくりこないな……。


「『核』っていうのは何なんだろうね」


 確かに。核っていうのは何のことなんだろう?


「この部屋の核ってことなのかな。ってことは……」


 俺は今もなお動き続けてる機械群に目を向けた。あの機械群をどうにかするってこと?試しに魔法を打ってみるが、ロボットと同じ材質でできてるのか魔法が触れた瞬間に霧散していった。壊すってことじゃないらしい。


 どういうことだ?やばい、謎解きって苦手なんだよね。力でどうにかできないのは初めてかも。


「この文ってさ読み方難しいよね」


 ふと、ルリアーナがつぶやいた。


「どういうこと?」


「だって、句点の場所で意味が少し変わってくるじゃん?『汝ら創造者の力を逆転させ、核を変質させよ』っていうのと『汝ら、創造者の力を逆転させ核を変質させよ』っていうのじゃちょっと違うじゃん」


 ……ん?


「そうだよ!それじゃん!」


 なんでこんな簡単なことに気が付かなかったんだ?俺たちはずっと『汝ら創造者の力』即ち俺たちの力をどうするかっていうことを考えていた。けどもし『汝ら、創造者の力』っていう意味だとしたら、創造者の力と俺たちは別のことだって捉えることもできる。


「それで、この部屋で創造者の力って言ったらあの機械群しかない!」


 ということは、この機械群の力を逆転させるということ。……どういうこと?


「組み立ててる機械だから、分解するような仕組みすればいいってことじゃない?」


 さすがアンナ!君ならわかってくれると信じてたよ。分からなかったわけではないからね!


 ちなみにヒントに気が付いたルリアーナ自身はポカンと口を開けていた。あまり理解できてないっぽい。


 さて、やることは分かった。問題はどうすれば分解する仕組みにできるかってこと。


「見た感じ魔道具とかと同じ仕組みっぽいんだけど、私はよくわからないんだよね……」


 師匠に教えてもらったり、学校で習ったりしたことはあるけどあんまり理解できなかったんだよね。あれ、難しすぎ。


「魔道具ならあたしわかるよ」


 ルリアーナが手を上げて言ってきた。そっか、確かルリアーナって学校の魔道具のテスト一位とか取ってたっけ。


「あたしに任せてよ!」


 ルリアーナはそう言い、機械に手をかざすと機械が淡い光に包み込まれた。しばらくすると、機械群の動きがストップし、そしてベルトコンベアが逆流し始めた。


「よし、完成っと!」


 壁に空いた穴から次々とロボットが運び込まれては機械に飲み込まれていき、最終的にはスクラップとなって出てきていた。


 ルリアーナの作業が完了すると、部屋の奥にある扉が音を立てて開いた。クリアってことっぽいね。


「次に進むか」


 終始よくわからなかった二つ目の部屋は思いもよらない形でクリアすることとなった。

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