第41話 侵入者
「それにしても、不思議だよね」
ルリアーナは螺旋階段の壁を触りながら言った。何が不思議なんだろうと思いみてみると本当に不思議だった。なぜなら、つなぎ目が一切なかったからだ。
この世界の建築は主にレンガなどの石で造られている。その際、どうしても石と石の間に隙間やつなぎ目が生まれてしまうのだ。しかし、この壁はそれがまるでない。コンクリートで作られたんじゃないかって程……。
まあ、古代文明の産物だからそういうこともあるのかもしれないが。
さらに下っていくと、大きな空間に出た。壁には埋め込み式の光、天井にはシャンデリアのような光源が設置されており、部屋全体に光が行き届いていた。部屋の奥には大きな扉があり、閉ざされていた。
「ここは……?」
俺たちが部屋の中に入ると、後ろの方でゴゴゴッという音が鳴り響いた。振り向いてみると、俺たちが入ってきた扉が今まさに閉じるところであった。
急いで止めようとするが、間に合わない。バタンッという音ともに、俺たちの退路が塞がれた事実が告げられた。
「んー!びくともしないよ!」
ルリアーナが扉を押すが、再び開く気配はなかった。
「閉じ込められたってことね……」
この広い空間に、アンナが発した事実だけが響き渡った。次の瞬間、再びゴゴゴッという音が鳴り響いた。
一体今度は何なんだ?何が起こってもいいように身構えていると、壁や床に大きな穴が開き、そこから物体が出てきた。その物体は人型をしており、地面に座り込んでいた。どうも金属のパーツが複数組み合わさってできた、まるでロボットのような身体をしており、顔の中心には、大きな窪みができていた。
音が鳴りやみ、すべてのロボットが出揃うと静寂に包まれた。俺は何が起こるのかと身構えた。次の瞬間、今いる全てのロボットの顔にある窪みがまるで単眼のように光り、一斉に立ち上がったのだ。立ち上がったロボットたちは、全員俺たちの方に向けてゆっくりと歩き始めた。
前方からは明らかに敵意を持ったロボット。退路はさっき塞がれてしまった。
「迎撃するしかないよね」
「そうだね。あっちは仲良くしてくれるような気配はないようだし」
「ここに来た時点でなんとなく予想はできてたけど……いくわよ」
それぞれが自身の獲物をもって構える。
『侵入者ヲ発見。ハイ除ヲ開始シマス』
戦闘の火蓋は、今切られた。
「まずは相手の動向を確認しないとね」
戦闘の基本は、どれだけ相手を分析できるかだ。魔物相手なら弱点の属性はどれか、どんな動きをしてくるのか、どこが急所なのかを判断する必要性がある。
とりあえず手始めに雷の魔法を放ってみる。ドラゴン装備の影響で即座にチャージして打てるようになったこの魔法は、最初の様子見魔法として申し分ない性能をしている。
「なっ……!」
俺の手から放たれた雷はロボットに触れると霧散してしまった。いや、魔法がマナに戻ってる?何が起こってるんだ?
「くっ……!」
アンナの方を見てみるとロボットの装甲に火花を散らして剣を弾かれていた。剣が当たった部分には小さな傷しかついておらず、剣でまともに倒せる相手じゃないように思えた。
「いったーい!」
ルリアーナは魔法が効かないなら拳で、と考えたのか強化魔法をかけた拳でロボットを殴っていた。剣をも弾く装甲が拳で貫けるはずがなく、案の定弾かれてた。
「どうするの、これ……」
俺たちの攻撃手段は全てこのロボットの前では無力となっていた。
徐々に部屋の隅に追い詰められていく。ロボットはその大きな腕を振りかぶって攻撃してきたり、手の先からビームを出したりして攻撃をしてくる。今のところ全て『マナ障壁』によって防げてはいるが、このままじゃジリ貧だ。
ふと横を見ると、ロボットを斬るために飛び上がったアンナが、ロボットから発射されたビームを空中で受けていた。ビーム本体は剣をうまく使い弾いたが、アンナ自身はその反動で、壁に叩きつけられる。
「「アンナ!」」
俺は追撃を防ぐために三人を覆うドーム状の『マナ障壁』を展開し、ルリアーナは治癒魔法を施した。
「アンナ、大丈夫?!」
「ええ、大した怪我はしてないわ、ありがとう」
あのビームは特に危険だな。直撃したらひとたまりもないだろう。現にアンナが弾いたビームは天井を焼き焦がし、そこにあったシャンデリアを落としている。
もうこうなったらヤケだ!マナに戻って無効化されるのなら、その処理が追い付かないほどの魔法を打ってやる!
俺は、氷の槍をおよそ百数十個生成し、一人のロボットを全方位から串刺しにした。俺の放った氷の槍は触れたすぐそばからマナに戻され、空気中に霧散していった。ただ一つを除いて。
『機能……停止……システム……ダウン……』
ロボットの単眼は光を失い、身体は地面に崩れ落ちた。そのロボットの単眼には俺の放った氷の槍が突き刺さっていた。
「こいつらの弱点は眼の部分よ!眼を狙って!」
弱点が分かったのなら話は早い。アンナ地面を蹴って眼の高さまで飛び上がり、剣を眼の部分に突き刺して倒し、ルリアーナは俺と同じように物理型の魔法をロボットの眼に突き刺していた。
俺たちは迫りくるロボットを倒し続けた。
――――――――――――――――――
「いくら何でも多すぎる!」
もうすでに数十体は倒したぞ。いったい何体出てくるんだ?この部屋のどこかに何かがあるのか?部屋には俺たちの後ろに閉ざされた扉があり、奥の方には同じく閉ざされた扉があった。扉は開かない。すでに試した。何か条件があるのだろう。だが、他に何かがあるようには思えない。
そういえば、一か所だけロボットの供給が止まっているところがあるな。他の場所と何が違う?あの場所は確かアンナが倒してたっけ?少し聞いてみるか。
「あの場所で何か特別なことをしてた?」
アンナは剣でロボットの眼を突き刺しながら答えた。
「あの場所?別に特に何か特別なことをした覚えはないわね。今と同じようにただロボットの倒してただけよ」
「でも、確かあそこで戦った時、ロボットのビームを跳ね返してたよね」
ルリアーナも魔法で迎撃しながら会話に混ざってきた。
「そうね、でもそれはあまり関係ないでしょう」
再びあの場所を見てみる。
俺は一つのことに気が付いた。
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