第24話 再会
「話って?」
「ここじゃあれなので、場所を変えましょうか。後ろの2人もついてきてください」
俺たちはヴェルトスさんに連れられ、立食パーティーを離れ応接室に招かれた。応接室には、ラインハルトさんと秘書みたいな方がいた。
「このことたちで間違いないよね?」
「間違いないです、ギルド長」
「ああ、適当にそこら辺のソファに座ってくれ」
ヴェルトスさんは俺たちに目の前のソファに座るよう促した。俺たちがソファに座ると、ヴェルトスさんは話し始めた。
「それにしても本当にこの女の子たちがね……。ああ、差別するわけじゃないよ。珍しいから驚いただけさ」
そう言って彼は微笑んだ。彼の眼には深い知識と経験に裏打ちされた理解が宿ってるように見えた。
「それに、冒険者ギルドは強い者を拒まない。男であろうと女であろうと、子供だろうが老人だろうが、裕福だろうが貧しかろうが。その証拠に、うちの筆頭魔法使いは女性だ」
ヴェルトスはそういうと指を鳴らした。その瞬間、俺はこれまで感じたことのないほどの殺気を当てられた。このままここにいると死ぬ、と本能で感じた俺はソファから飛び上がり、ドアのところまで退いた。アンナとルリアーナも同じく感じたのか、俺の横にいた。
身構える俺達に攻撃が浴びせられることはなく、ただ一人の女性が出てくるのみであった。
「そこまで殺気を放たれると私まで逃げ出したくなるだろう」
「それは、申し訳ないわね。つい彼女たちを試したくなってしまって」
「師匠!」
突然部屋の中に現れ、ヴェルトスさんと話している女性は、紛れもなく俺の師匠であるオリヴィアだった。
「なんで師匠がこんなところにいるの?」
「あれ言ってなかったっけ?」
師匠は俺たちに向き直って言った。
「私、冒険者ギルドの筆頭魔法使いなの」
えぇぇぇぇ!聞いてないよ、そんなの!確かに強いし、普段何をしてるのか聞かなかった俺も悪いけど!
「君たちは知り合いなのかい?」
「ええ。彼女――カルラは私の一番弟子よ。ほら、一時期出張してたじゃない?あの時期に教えたのよ」
出張?!あれって、出張で来てたの?なんて人なんだこの人は……。
「ええと、本題に入ろうか。ラインハルト、説明を頼む」
「はい。今回、カルラ、アンナ、ルリアーナの3人は私たちの筆頭魔法使いであるオリヴィアと一緒にドゥルガの森に向かってもらいたい」
ドゥルガの森はヘルゲンの西にある、半分開拓されていない森だ。そのため、あの森には魔物が数多く生息している。それにしてもなぜそこに?
「最近の魔物の動きはおかしい。君たちが倒したサイクロプスを筆頭に、多くの魔物が普段出ない場所に出現したり、狂暴化してたりなど……。君たちには、その原因を突き止め、解決してほしいのだ。うちの調査によるとドゥルガの森の深部を中心に異変が起こってるため、おそらくそこに原因があると思われる」
「というわけで、これからよろしくね」
えぇ……。俺は困惑に包まれた。
「出発は明日だからそれまでに準備しといてね」
師匠にそう言われ、俺たちは立食パーティーへと戻った。
「なんか、大変なことになったね」
ほんとにそう思う。確かに魔物の異変は感じていた。サイクロプスの後にも、依頼をこなしているときにその異変を感じることはあった。それを俺達で解決することになるなんてな……。しかも師匠と一緒に。
「まあ、考えても仕方がないよ。今はこのパーティーを楽しもう」
俺は考えることを放棄するためにいろいろな料理を楽しんだ。すべてちゃんと美味しかったです。
――――――――
カルラが応接室を去ったあと、その場にはヴェルトス、オリヴィア、ラインハルトの3人が残っていた。ヴェルトスは窓の外を眺めるオリヴィアに質問をした。
「あの娘たち、オリヴィア的にどう思う?」
「申し分ないと思うわ。私の殺気にあの素早い反応を示したし。特にカルラ、あの娘は私が師匠ということもあってすでに一級品よ」
「そこまでなのですか?」
ラインハルトはおって質問をする。
「ええ、もしかしたらカルラは私よりもすでにマナ保有限界量は上かもしれないわね」
オリヴィア以外の2人は驚きの表情を見せた。
「それにしても今回の依頼、かなり危険なのでは?」
「ギルド員の調べによるとドラゴンの可能性も視野に入れるべきとのことですが」
ラインハルトは不安の表情を浮かべた。
「大丈夫でしょ。もしかしたら私は必要ないかもしれないわね」
「ですが……!」
「わかってるわよ、彼女たちに何かが起こらないために私がいるんでしょう?私がいる限り彼女たちは死なないわ」
3人の間に沈黙が残った。
「この件は今からオリヴィアに全権限をゆだねる。ラインハルトもいいね?」
「はい、問題ありません」
「そういうことだから、頼んだよ。君を信頼してる」
そう言ってヴェルトスとラインハルトは応接室から出ていった。
「カルラ、強くなったわね……」
応接室に一人残されたオリヴィアは、窓の外に浮かぶ月を眺めながらただ一人の弟子を思い浮かべた。
――――――――
「へっくち」
「大丈夫?風邪じゃないよね?」
「誰かがカルラの噂をしてるのかもね」
「それだけはないでしょ。私そんなに有名じゃないし」
そんな会話をしながら俺たちは宿に帰った。
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