第23話 立食パーティ
翌日、ぐっすり眠った俺たちは今夜ある立食パーティーに着ていくドレスを決めに、ドレスの専門店に来ていた。
その店には多くのドレスが取り揃えられており、店員が見繕ってくれるなどのサービスがあるらしく、初心者の俺たちにとって打って付けの店だった。
「ほんとに選ばなきゃダメなの?」
「駄目よ。それにカルラは可愛いから絶対に合うと思うわ」
「そう言われたってさぁ……」
正直、俺はドレスを着るのが嫌だった。というか、スカートがそこまで好きじゃないのだ。下半身が心許無いし。
「ルリアーナを見て見なさい。もう多分話しかけても聞こえてないわよ」
確かに……。彼女、店に入ってからすぐドレスに魅入られてたからなぁ……。とはいえ、ドレスかぁ……。
そんな感じでウンウン唸っていると、店員に声をかけられた。
「お困りのようですが、どうされましたか?」
「この娘が自分に合うものが分からないらしくって」
ちょ、アンナ?!
じっとアンナを睨みつけると、目を逸らされた。
「それでしたこちらの方に来ていただいて――」
アンナぁぁぁぁ!裏切ったな!
俺は店員にドレスを選ぶべく連れていかれた。
数十分後……
「それも可愛いじゃん!カルラに似合ってるよ!」
「今度はこちらの商品とかどうですか?」
何故か店員にルリアーナも混ざり、俺は着せ替えに人形の如く色々なドレスを着ていた。なんで俺がこんな目に……。こんなことになるなら立食パーティーに出席しようなんて思うんじゃなかった……。
というか、色々着てみて思ったけどドレスって意外と肩や胸元を露出するものが多いんだね。ドレスに触れ合う機会がなかったから初めて知ったよ。
「カルラ的に、どれが一番いいと思った?」
やっぱり、最終的には買わなくちゃいけないんだよな……。
「……これ」
そういって指を指したのは、水色の肩や胸元の出てないドレスだ。俺が着た中には、肩とかを露出してるやつもあったんだけど、なんか恥ずかしくって。
そのドレスには軽くフリルやレースが施されており、シンプルな造りとなっていた。
「あたしもこれが一番カルラに似合うと思ったんだよね!」
アンナのほうを見ると……
「いいんじゃない?カルラらしくって」
アンナの許可ももらったので、俺はそのドレスを買うことにした。ちなみに、アンナは俺と同じタイプの黒バージョン、ルリアーナは黄色の肩を出したドレスを買っていた。
夜になり、俺たちは昼間に買ったったドレスを着て街の中心にある、アンベルク城に来ていた。
なぜ共和制国家なのに城があるかって?それはこの国がもともと王国だったからだ。ただ、ある王の時に内乱が起こり、段々と今の政治体制になったとか。
それ以来、この城はこういったパーティーや各ギルドの話し合いとかに使われている……らしい。俺も人伝てで聞いた話だからそこまでよくは知らない。
それにしても、開始前だというのに賑わってるな。あ、俺たちと同じぐらいの年齢の子を発見。あれが、ほかの冒険者学校の優勝者か。挨拶は……いっか。相手男だし、面倒なことになりそう。
あたりを見渡していると、見覚えのある人が近づいてきた。
「また会ったね」
えっと……。このおじさんは誰だろうか。俺たちに話しかけてくるということは何か面識のある人なんだろうけど……。
「私たちの街の冒険者ギルドの支部長であるラインハルトさんよ」
アンナが肘で小突きながら小声で教えてくれた。ああ!あの人ね。
「お久しぶりです。今日はどうしてここに?」
「……?今日の立食パーティーには各街の各ギルド長も呼ばれているんだよ。それにしてもここにいるということは、冒険者学校のトーナメントに優勝したってことかい?」
「そうなんです。私とアンナが優勝して、ルリアーナはパーティだからということで招待されました」
「いやはや、サイクロプスの討伐報告を聞いた時も驚いたけど、まさかトーナメント優勝しちゃうとはね」
ラインハルトは、いかにも意外といった感じで笑った。
「……君たちならこの国を変えられるかもしれないね」
「え?何か言いました?」
「いいや、ただの独り言さ。さて、そろそろこの立食パーティーも始まるぞ」
ラインハルトがそう言うと会場が暗くなり、前のステージがスポットライトで照らされた。そして、ガタイの良いおじさんが目に出てきて、礼をした。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。開始のあいさつは私、冒険者ギルド長のヴェルトスが務めさせていただきます。とはいっても堅苦しい話は苦手なので、飲んだり食べたりして楽しみましょう!」
彼のあいさつは拍手とともに終わった。なんか、軽い感じの人だったな。
ところで、ふと思ったんだけど立食パーティーってマナーあるのかな?あるだろうなぁ……。どんな感じなんだろう。
「アンナ、立食パーティーってどんなマナーがあるの?」
「基本的に、主催者……今回の場合は冒険者ギルド長に挨拶をしないといけないわ。あとは、なるべく他の人と関わることね」
へぇ……そんなマナーがあったのか。会社員時代、立食パーティーに何回か誘われたけど面倒臭くて毎回断ってたからなぁ。断ってて正解だった。
主催者のギルド長は……っと。あ、今別の人と話してるみたい。
「別の人と話してるけど、どうすればいい?」
「その場合は、少し経ってあまり話してないときに話しかけるのが正解よ」
「じゃあ、料理を適当に食べながら待っておこう」
「料理を食べるのはいいけど、それにもマナーがあるからね」
またマナー?もういいよ……。
俺はアンナから手取り足取り一つずつマナーを教えてもらった。そんな感じでしばらく料理を食べていると、
「今回のパーティー、楽しんでおられるようですね」
主催者である、ギルド長のヴェルトスさんに声を掛けられた。不味い、声かけるの忘れてた。すっかり料理を食べるのに夢中になってた。
「ええと、本日は招待していただき、ありがとうございます。すぐ挨拶できなかったこと、申し訳ありません」
何とか俺は慌てて取り繕う。これで怒られなきゃいいんだけど……。
「ははは、気にしなくていいですよ。そんなに堅苦しいのもやめてください。本日は話があって呼んだんですよ」
話?
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