第22話 首都
あの事件から数日後、俺たちは首都行きの馬車に乗っていた。トーナメントの優勝商品である舞踏会へ参加するためだ。
それにしても舞踏会ねぇ……。踊った経験がないけど大丈夫かな?
「外みてよ!すっごい綺麗だよ!」
ルリアーナに言われ外を見てみると、雄大な自然が広がっていた。地平線まで広がるみいどりを見ていると心が落ち着く感じがする。都会に暮らしてる人が『田舎に行きたい』って言うのも少し理解ができるかも。
「あれは……?」
アンナが指さしている先を見てみると土煙が上がっていた。あれは何だろう。
「お客さん、あれはセキタルっていうここらじゃ有名な魔物ですぜ。心配しなくても問題ない、繁殖期でもなけりゃよっぽどのことがない限り人間に危害を加えない大人しい魔物さ」
御者の人から説明があった。とはいっても心なしかこちらに近づいてきてるような……。
「なんか近づいて来てる気がするんですけど……」
「そんなわけが……本当じゃねぇか!この時期は襲われることねぇから冒険者も雇ってねぇんだよ!ああ、神よ。我らをお救いください……」
「馬車を止めてください。私たちが応戦します」
「さすがの俺も女の子に戦わせるほど落ちぶれてねぇぞ!」
「安心してください、私たちは冒険者です」
そういいながら、俺たちは馬車から出てセキタルが来るのを構えた。
「もしかしたら、あたしたちが目的じゃないかも……」
そういうルリアーナを、セキタルは腕を振りかぶって攻撃した。『マナ障壁』がなかったら怪我をしていたね。
「そんなことを言ってる暇があったら、一匹でも多く処理して頂戴」
アンナは細身の剣をセキタルの身に滑らせながら言った。さすがの剣筋、惚れ惚れするよ。
「ごめんって。あんまり無暗に殺したくないからさ」
そういいながらルリアーナは反撃した。セキタルは何というか……チーターみたいだな。馬車があるからなぁ……。あんまり大きな魔法を打てないよな。一匹ずつ処理するしかないか。
俺は向かってくるセキタルの首を確実に『ウィンドカッター』で切断していった。強さ的にDクラスぐらいの魔物かな?迫りくるセキタルの群れを処理していると、セキタルたちが退いていくのが見えた。追う必要性はないか。
「お客さんたち……強かったんだな。助かったよ、感謝する。首都についたらぜひお礼をさせてくれ」
俺たちは倒したセキタルをマジックバックで回収し、再び馬車に乗って首都に向かった。頼むから、もう何事も起こらないでほしいな。
俺のそんな願いが届いたのか、そのあとは順調に進んでいき首都に着いた。御者のおじさんにはお礼として、首都のおすすめの場所を教えてもらった。御者のおじさんは満足してなさそうだったが、特別なことをしたわけじゃないので、これ以上のことをしてもらうと少し罪悪感を感じる。
「ここが首都アンベルク……」
「わ~すごい!あれ見てよ!おっきい銅像が建ってるよ!」
ルリアーナが指を指した先には見上げるほど大きな男性の銅像が建っていた。確か建国者であるゼルキスっていう人だったかな?それにしてもすごい街だな。大都会って言うのがこれ程ふさわしい街は始めて見た。確か俺たちが入ってきたところは商業が発展しているんだっけ?だからこんなにも賑わっているのか。
俺たちが街を観光していると、ふと声をかけられた。
「おい!そこの嬢ちゃん達、ぜひ良ければうちの商品を見ていかないかい?」
そう言われて少し見てみると、そこには恰幅のいい男性が目瀬の呼び込みをしていた。特に急いでいる用事もなかったので、少し見てみることにした。
店の中に入ってみると、色々な宝飾品が並んでいた。そういえば、アクセサリーって気にしたことがなかったな。俺が着けてるのって師匠からもらった指輪だけだし。
「カルラ、見てよこれ!」
ルリアーナが指差した先を見てみると、銀色のネックレスがあった。そのネックレスには魔法石が嵌め込んであり、マナをそこに貯めておけるようになっていた。
なるほど、こういうアクセサリーもあるのか。魔法石ってマナを入れると綺麗に光るし、そこからマナを取り出して魔法も使えるから、実用的だ。
「お客さん、お眼が高いですね。そちらの品は当店一番の商品となっております。金額は白金貨10枚となっておりますが、魔晶石の質はいいですよ」
白金貨10枚?!高っ!家が一つ建つぞ!
他もこんなに高いのか?そう思って見てみると、今いるところが特別金額が高いところのようだった。中でも、魔法石を使ったアクセサリーはとくに高かった。
これは気軽に手が出せないな……。ルリアーナに至っては驚きすぎて腰を抜かしてるじゃん。
「アンナはいいの見つけた?」
「金額的に手を出せないわ……」
アンナも金額の高さに言葉を失っていた。まあ、安いやつでも金貨数枚はするからなぁ……。
それから、俺たちは何も買わずに外へ出た。というか、今持ってる金額じゃとても買えなかった。
「次来るときは絶対に買ってやる!」
「そのためには、その分稼がないとね」
なんか、冒険者をする目的が増えたな……。
それから、俺たちは今日泊まる宿へと向かった。今回の旅行で使用する宿は、俺たちに招待状をくれた冒険者ギルドが用意してくれている。
「三人部屋?」
用意された宿に行き通された部屋は、まさかの3人部屋だった。2人部屋なら聞いたことはあるけど、三人部屋って……。どうにも、俺たちが三人パーティってことを知った冒険者ギルドがわざわ三人部屋がある宿を探したらしい。
一体どういう意図があるんだ……?まあ、考えても仕方がないか。用意してもらった立場だし、文句は言えない。
夕食は宿が用意してくれたものを食べた。まあ、無難においしかったよね。
「じゃあ、今日もお願いします……」
俺は寝る時間になってアンナに抱き着かれた。実は、あのパジャマパーティーの時に俺が抱き枕になったことが忘れられなかったらしく、それ以来一緒に寝る機会があれば俺を抱き枕にして寝ていたのだ。
そして、こういうことになったら大体……
「あたしも~!」
こうやってルリアーナも俺に抱き着いてくる。俺自身もこれが若干癖になってきているのが怖い。
でも、この状態のときはいつもよりぐっすり眠れるんだよな……。
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