第15話 パジャマパーティー(1)
さて、晩御飯を作ることになったとはいえ、まだ何を作るかは決めてない。いったい何を作ろうか。とはいってもそこまでこの世界の料理は詳しくないんだよなぁ。
「どんなのが食べたい?」
「そうね……。カルラ故郷の料理とか食べたいかもしれないわね」
「確かに!あたしも食べてみたい!」
故郷の料理か……。味噌汁、から揚げ、おにぎり……思い浮かぶのは、どれも地球の料理ばかりだ。いや、地球の料理でいいのか?俺の故郷だしな。
そうと決まれば話は早い。俺は早速食材を探し始めた。
「作る料理が決まったみたいだけど、何を作るの?」
「ふっふっふ。それは食べるまでのお楽しみで」
俺はジャガイモ、ニンジン、牛肉、玉ねぎを買い集めた。ここまで言えば大体の人はわかるだろう。地球を代表する昔から愛されてやまない料理。おれが作ろうとしてるのは、カレーだった。
さて、ここで俺は大きな壁に当たってしまう。ルーをどうしよう。正確には香辛料を、だ。転生する前、俺は一時期何を血迷ったのか料理を極めようと努力していた。あの時は料理が楽しかったからな。結局現実を見て挫折することになったのだが。
その時の知識で、どんな感じでカレー粉を作ればいいかはわかる。だが、この世界に同じような香辛料があるのだろうか。
実は、俺が買っていった材料はすべて地球にあったものに似たものだ。だから厳密には少し風味とかも違うだろう。
俺は過去の記憶を頼りに、似たような風味の香辛料をチョイスしつつ、買い物を進めていった。
――――――――
「さてと、作りますか」
俺は自分の部屋のキッチンに立って言った。キッチンとはいっても、マナで動くマナコンロを置いて、周りに油とかが飛び散らないようについたてを立てただけの簡易的なものだ。
ちなみにさっきの買い物で、食器類も買ってきた。普段のご飯は学食で食べるため、今まで持ってなかったのだ。これを期に自炊を始めてみようかな。
そんなことはさておき、早速買ってきた材料を出して調理を始める。まな板や包丁は買わなかったので、魔法で代用した。これが意外と難しい。『念力』で食材を固定し、物を切るのに何かと便利な『ウィンドカッター』で、食材を切るのだが、如何せん出力を誤ると、食材を通り越してその先まで切ってしまいそうになるのだ。
何とか各食材を一口大に切り終えたら、マナコンロにマナを流して火をつける。コンロの上に鍋を置き、油を薄く引いてから肉を入れる。ある程度焼けたら野菜も入れて炒める。しばらくしたら水を入れてとりあえずは終了。あとはしばらく煮込むだけだ。
煮込んでる間に、カレー粉を作る。買ってきた香辛料を魔法で細かく砕き粉末状にして、それを火にかけて軽く炒る。この時、焦げないように適度に混ぜるのがポイントだ。まさか、料理を極めようとしてたあの時期の経験がこんな時に活躍するとはな。人生何事も経験だとはよく言ったものだ。
そろそろいいかな。出来上がったカレー粉を具材の入った鍋の中に入れて、焦げないようにかき混ぜる。最後に少し煮詰めればカレーの完成だ。
時間もいい感じになってきたし、そろそろ食べようか。
「できたぞー」
「さっきからいい匂いはしてたけど、なんて料理なの?」
「初めて見る料理ね」
「これぞ、私の故郷で愛されてる料理の一つ、カレーだよ!」
「「かれー?」」
「まあとりあえず食べてみてよ、おいしいから」
俺は、カレーとともに、軽く焼いたパンを2人の前に置いた。今回の主食はパンだ。日本人たるもの米がよかったのだが、米は探しても見当たらなかった。この世界にはないのかもしれない。
2人は恐る恐るカレーをスプーンですくって口に運んだ。口に含んで何度か咀嚼した後、彼女たちの手は止まらなくなった。
「おいしい、おいしすぎるよ!なんで今まで知らなかったんだろう!」
「こんなにおいしいの食べたこと無い」
俺は2人の反応を見て満足げにうなずいた。
「「おかわり!」」
やはりカレーの魔力は偉大なのだ。今度暇なときにカレー粉を作り置きしておこう。そう思いながら俺は2人とのご飯を楽しんだ。
3人でカレーのおいしさを堪能した後、俺たちは大浴場へと向かっていた。この学校の寮には男女別の大浴場が併設されている。昨日まで女子の大浴場は工事をしてて入れなかったのだが、今日から解禁されたので3人で行ってみることにした。
今までどうやって体を洗ってたかって?それは女の子の秘密だ。
そんなわけで、大浴場に来てみたが……
「うわ~、広いね!」
大浴場の名にふさわしい広さをしていた。これなら百人近く入っても余裕あるんじゃないかな?さすがに言いすぎか。
大浴場というだけ、大きな浴槽もあった。久々の湯舟だ。日本人の血が騒ぐ。俺たちは軽く身体を流し、湯舟に浸かった。
「はふ……」
やっぱりお風呂っていいよなぁ……。こっちの世界に来てしみじみと感じるよ。それにしても……
「ルリアーナって胸大きいよね……」
「そりゃもちろん、毎日たくさん食べてるから!」
ルリアーナは自信満々に胸を張った。そんな彼女をアンナが睨んでいるように感じた。
「で、でも、胸は大きさだけじゃないと思うから!」
そんな視線に気が付いたのか、彼女はアンナに向けていった。
「別に胸の大きさなんて気にしてないわ……」
アンナは少し不機嫌そうになりながら、そっぽを向いた。
「わ~!アンナの胸もかわいらしくていいと思うから~!」
今後アンナの前では胸の話はあまりしないようにしよう。
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