第14話 私服

 あれから体育館弁償を返済するために毎日依頼をこなした。幸いにも、弁償額はそこまで高いものではなかったため、数日で払うことができた。

 今日は冒険者学校に入って初めての休日だ。そして、3人で遊ぶ日でもある。寮の前で待っていると、ルリアーナとアンナが来たアンナは普通に学校支給の制服だったが、ルリアーナは私服だった。

 Tシャツにロングスカートというシンプルな服装ではあったがそれだけでも彼女の魅力は十分引き立っていた。こいつ……自分のことをよく理解してやがる……。ちなみに俺はアンナと同じく制服だ。


「ちょっと、なんで2人とも制服なのよ!せっかく2人の私服が見られると思ったのに!」


 そういわれても女子の服には疎いし……。


「よし!今日は2人の服を買いに行こう!」


 ええ……。まあ今日の予定は特に決まってなかったからいいんだけどさ。


 俺たちは俺とアンナの服を買うために、服屋へと向かった。


 ――――――――――


「えーっと、ここがルリアーナオススメの店?」


「そう!ここ『シルバームーン・テイラーズ』は、かわいい服がそろってるんだよ!」


 見ればわかる。明らかに『ザ・女の子』みたいな雰囲気を醸し出した服屋だった。


「ええと……。私は別のところで買おうかしら……」


「だめだよアンナ!君だけ別のところなんて仲間外れみたいじゃないか」


 逃がしはしないよアンナ。俺だけ犠牲にしよったってそうはいかないからな。


「それじゃあレッツゴー!」


 俺たちを残して一人だけやけにテンション高く店に入って行った。


「「はぁ……」」


 俺たちは眼を見合わせて店の中に入って行った。


 数時間後……


「これもかわいいし~、これなんかもどうかな?」


 俺とアンナは、見事にルリアーナの着せ替え人形と化していた。いや、別に嫌なわけじゃないんだけどね?最初は女の子っぽい服に抵抗があったけど着せられてるうちにだんだんと楽しくなってきたし。


「アンナはこんなのも似合うと思うよ!」


「そ、それは私の柄に合わないと思うのだけれど……」


「そんなことないって、絶対可愛いから!とりあえず着てみよ?」


 そう言って渡していたのは、まさかのメイド服だった。アンナは半ば無理やり試着室に入れられてた。


 試着室から出てきたアンナはそれはもうとてもいいものだった。黒を基調としたメイド服に身を包まれたアンナは可愛かった。ロングスカートなのもまたいい。うん、可愛い。


「やっぱり、私には似合わないと思うのだけれど……」


「そんなことないよ!カルラもそう思うよね?」


「うん、可愛いんじゃないかな」


 そう言うと、アンナは少し頬を赤らめた。それがまた可愛い。


「まあでも、普段着るのには向いてないんじゃないかな?」


「ん~、それもそうかな……。じゃあやっぱこの服は無しで!」


 そういってルリアーナは別の服を探しに行った。てか、なんでメイド服なんかあるんだよ……。

 気が付くと、アンナは普段の服に戻っていた。どれだけ嫌だったんだ。

 俺も服探すかぁ。そう思い歩いていると、あるところに目が留まった。


「これは……」

 

 俺の視線の先には動物を模した寝間着があった。そういえば、こっちの世界に来てからは、寝間着という寝間着を着てなかったな。普段は軽く何かを着る程度だったし。


「あ、動物パジャマじゃん!かわいくていいよね、動物パジャマ。そうだ、パジャマパーティーしようよ!」


「パジャマパーティーって……。いったいつするつもりなの?」


「いつって、今日に決まってるじゃん!」


「場所は?」


「それはもちろんカルラの部屋!」


 なんで俺の部屋なんだよ。いや、別にいいんだけどさ。


「そうと決まればパジャマを選ぼう!ん~、これもかわいいし……いやでもこっちも……」


 ルリアーナは早速パジャマを選んでるようだった。パジャマパーティーをするのは確定事項のようだった。俺の隣でアンナが呆れたように額に手を当てている。わかるぞ、その気持ち。


「よし、これに決めた!あ、2人の分はこれとこれね」


 どうやら俺たちの分まで決めてくれていたようだった。ルリアーナは犬を選んだらしく、俺とアンナはそれぞれキツネと猫を模したパジャマとなっていた。なぜ俺がキツネかって?それはルリアーナに聞いてくれ。

 とまあそんな感じで、大量の服を買い店を出た。買った大量の服は俺のマジックバックに入れたため荷物がかさばることはなかった。


「パーティーと言えば一緒に晩御飯も食べたいよね。食材を買いに行こう!」


「それを作るのってもしかして……」


「うん?カルラの部屋でやるからカルラに作ってもらうつもり!」


 やっぱりそうなるか……。いや、いいんだけどね?別に料理は嫌いじゃないし。


「その前に昼ごはん食べない?そろそろいい時間だと思うんだけど」


「そうね。私も賛成よ」


「それならあたしのおすすめの店があるよ!」


 そんな感じで、俺たちはルリアーナのおすすめの店に昼ご飯を食べに行き、今夜の晩御飯の材料を買うべく、市場へと向かった。

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