第8話 入学試験(1)
翌朝、かなりすっきり起きられた気がする。今日は入学試験当日だ。軽く身支度をして冒険者学校へ向かう。試験は学校内の施設で行われる。
学校まで行くとすでに多くの人がいた。よくわからないが、とりあえず人の波に流されることにした。たぶん大丈夫だろう。周りの話を聞いてると、どうやら能力を数値化するらしい。なんでも今年から導入されたのだとか。これが第1の試験なのかな。基準値以下の人は落とされるとか。
よく見てみると、数値を測定した人は、何個かのグループに分けられているようだった。測定は魔法学科、戦士学科の2つに分かれて、各1人ずつ測っていくらしい。自分の番まで、まだまだ時間あるなぁと思ってぼーっとしてると、横から声をかけられた。
「あなたよね、昨日街の外で私に手助けをしてくれたのは」
横を見てみると、確かに昨日の黒髪の子だった。この子は戦士学科なのだろうか。というかなぜ俺だとバレた?わかりにくいようにしたはずなんだけど……。
「なんで、って顔をしてるわね。安心して、私以外には気づかれてないと思うから。私はこの”眼”があるからね」
そう言って彼女は自身の左目を指していた。彼女の左目には何らかの紋章が浮かんでいた。
「これは”神眼”っていってね。ある程度、自分に関わることは、見通せるのよ」
なるほど、それでバレてしまっていたのか。
「私の名前はアンナ。アンナ・エリアスっていうの。昨日の手助け感謝するわ」
「カルラ・クライストよ。こちらこそありがとう。おかげで目立たなくて済んだよ」
「そろそろ、私の番みたいだから行くね」
そう言って彼女は測定器のところに行った。
それからしばらくして、俺も測定することになっていた。測定器は箱の中心に水晶が埋め込まれているようなものであり、手をかざすと数値が出るようになっている。数値には身体能力、マナの量の2つが出るらしい。身体能力はさほど高くないがマナの量はこの歳の平均ぐらいになるように調整した。
測定が終わった俺は複数あるグループのうちの一つに案内された。男しかいなくね……。
この世界で働いているのは大半が男であり、男尊女卑が激しい。共和国であるここ、シルトヴェルトはまだマシだが、それでも国によっては女性に人権などないに等しいところもある。その男尊女卑は冒険者も漏れなく該当する。そもそも身体の基礎能力が男性の方が上のことが多いため仕方のない部分もあるが。
それにしてもほんとに男しかいないなぁ。そんなことを考えていると、こっちに向かってきてる人影が見えた。
「女の子だ!女の子がいたよぉ!あたし一人で寂しかったんだよね!しかもかわいい!名前は?」
ちょいちょいちょいちょい抱き着いてくるな!当たってるって、君のその大きな果実が!
「ちょ、ちょっと離して...」
「ごめんね。つい興奮しちゃって」
そう言って目の前の女の子は軽く舌を出し、唇をなめる仕草をした。女の子の距離感マジヤバイ。目の前の女の子は橙色の髪を後ろの方で青いリボンを使い束ねてポニーテールにしている。翡翠色の眼をしており、とても動きやすそうな服装をしており、大きな2つの果実が強調されていた。彼女は眼を輝かせながら俺に言った。
「あたしはルリアーナ・エリアス。あなたは?」
「私はカルラ・クライシスよ。よろしくね」
「カルラちゃんだね。よろしく」
「カルラでいいよ、ルリアーナちゃん」
「あたしもルリアーナでいいよ」
そう言って、俺たちは握手をした。
ちょうどその時アナウンスが入った。
『全員、教員の指示に従い移動を開始してください』
周りの人が動き出したので、俺たちもついて行った。
進んでいくと、まるでスタジアムのような場所に連れてこられた。真ん中に広いスペースがあり、少し高くなっている外側には、観客席がずらりと並んでいる。五千人は入るんじゃないか?
「それにしても今年の試験内容はどんな感じなんだろうね」
「去年みたいに魔物と戦うとかだったら楽なんだけど……っと。説明があるらしいよ」
まるでボディビルダーのような体つきをした男性が声を張って説明を始めた。
「今年の試験は、受験生同士による対戦だ。これから一組ずつ呼んでいくからその都度会場に来るよう。会場はここ第1体育館だ。たぶん担当の人がいるから分からなかったらその人に聞いてくれ」
続けて男性は言った。
「まず最初の一組目を発表する。カルラ・クライシス対エトムント・グライハートだ。試合は今からちょうど三十分後に開始する。遅れた場合は即失格なので気を付けるように」
え?俺初戦なの?しかも対戦だって?
「頑張ってね、カルラ!あたし応援してるよ」
俺の隣で、ルリアーナは眼を輝かせていた。
「私の戦いっぷりを見といてね!」
俺は笑顔でそういった。
――――――――
「とは言ったものの……」
受験生同士の対戦だとは思わなかった……。
俺は今控室にいた。試合が始まるまでそこで待機しとけって案内があったからだ。
「師匠は『同世代でお前の右に出る者はいない』って言ってくれてたけど……」
どうすればいいのだろうか……。というか、注目されたくない。
「考えても仕方がないか!」
俺は会場に通じる扉を開けた。
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