第5話 師匠
「あなたには私の技術を継いでもらうわ」
「え?」
「少し前、私のもとに久々の任務が来たのよね。その内容は”地上に膨大な量のマナを持つ少女が現れる。そのものに、貴殿の技術を受け継いでほしい”というものだった。」
「その少女が俺だって?俺じゃないかもしれないじゃん」
「いや、君で確定だよ。見て確信したわ。だってあなたその歳にふさわしくないマナを体に有しているもの。」
むぅ。それは言い返せない。
「神からの任務だから俺に技術を教えるっていうの」
「確かに最初はそうだったけど、あなたを見て私も興味が出てきた。それにあなたにとっても悪い話じゃないと思うけど。」
確かに…。そろそろ本に載っている魔法も覚えつくして、どうしようか考えているところではあった。怪しさはあるし、不安な部分もあるが…
「わかりました。俺にあなたの技術を教えてください」
「よろしい。これから私のことは師匠と呼ぶように。」
彼女は微笑みながら言った。そして
「まず最初にこれを習得してもらいます」
そういいながらオリヴィアは指の上に水で数字を作って見せた。
……無理じゃね?
――――――――――
オリヴィア曰く、
「魔法というのはマナのコントロールで成り立っているわ。マナを効率よく使えば、同じ魔法でも威力も使用するマナの量も変わってくる。」
だとか。そのマナのコントロールを上げるために指先に水で数字を作るらしい。ちなみにオリヴィアは両手の指で1~10を作ることができる。とりあえず俺は1本でいいそうだ。
1時間の練習の果てに何とかコツをつかんできた。そして見事指の上に数字を作って見せた。
「こんなに早くできるとはね。正直驚いたわよ。それじゃあ次は魔法を覚えてもらいましょうか。」
そう言って説明されたのは『テレポート』という魔法だった。なんでもこの魔法を扱える人はかなり貴重らしく、どんなにすごい人でも覚えられないこともあるそうだ。それ故に、特殊に分類されている。
今日弟子になった人に、求める魔法じゃなくない?難易度高すぎるんだが。
イメージは教えてもらったが、なかなかに分かりづらい。やる前から分かっていたが、いざやってみるとマナのコントロールが難しい。それと恐怖心がある。失敗すると体自体が消えてなくなりそうな感じがするのだ。
アドバイスを求めたが、帰ってくる言葉はイメージだけ。
その日はずっと『テレポート』の練習をしていた。
「今日は遅いし、感覚をつかめるかもだから私が魔法で家の近くまで送ってあげるわ。」
そう言って。俺の身体を抱き寄せた。ちょっと、当たってるんですけど……!
「密着する必要ってあるんですか……!」
「ないけど、こっちのほうがいいじゃない」
ないのかよ!こちとら中身男なんだよ!
新手の暴力を受けている俺を気にせず、彼女は詠唱を始めた。
「大人しくしないと、おいてくわよ。……『テレポート』」
次の瞬間、周りの景色が変わった。これが『テレポート』……。
「それじゃあ宿題として、明日は私のところまで『テレポート』で来ること」
うっ……。難題を出しやがって。
俺たちは別れの言葉を言って解散した。
解散する直前、オリヴィアは振り向いて言った。
「そういえば、私のことは他言無用でお願いね。それと、”俺”はやめた方がいいと思うわよ。だって今のあなたは、”
少し頬が熱くなるのを感じた。
――――――――――
翌日、朝食を食べた後外に出て、俺は深呼吸をしていた。昨日の説明と実際にテレポートした感覚を思い出していたのだ。
まず自身の身体を俯瞰的にイメージし、周囲を簡単にイメージする。そして、テレポート先の風景をイメージし、そこに自身の身体を置く。あとはその2点間をつなぐような線を結び、そのイメージにマナを乗せる。
「『テレポート』」
その瞬間俺は、家の横から昨日来た書斎へと移動した。成功したのだ。
「まさかほんとに『テレポート』で来るなんてね。おめでとう」
それからというもの、毎日瞑想を行って、魔力保有限界量を増やし、オリヴィアのところに行って魔法の勉強をした。『テレポート』のほかにも各属性の中級魔法、空を飛べるようになる『跳躍』、魔法や攻撃を防いでくれる『マナ障壁』、物に魔法をまとわせる『付与』などを覚えた。もちろん、日を追うごとにマナのコントロールはより精度を増していった。
ほかにも、自分のマナを隠す方法も学んだ。オリヴィアが言うには、魔法使い同士は体から出てくるマナの量で相手の力量がわかるらしい。そして俺は、同年代でも類を見ないほどのマナを保有しているためこのままではトラブルとかも起こるだろうということで教えてくれたのだ。それと同時に相手のマナを見ることも。
オリヴィアとは何回も模擬戦をした。全戦全敗だけどね。その過程で相手の魔法を打ち消すことも学んだ。魔法を打ち消すには圧倒的なマナで搔き消すか、相手の魔法を読み相反するマナを当てるといった感じだ。魔法によって属性は決まっていて属性の相性もある程度決まっている。火は風に強く、風は土に強く、土は水に強く、水は火に強く、といった感じだ。
ここで、相手のマナを見ることが重要になってくる。属性ごとにある程度のマナの形は決まっているからだ。それを隠すのもその魔法使いの技量次第というのもあるが。
たまにオリヴィアと海に行ったり山に行ったりと、小規模の旅行みたいなこともした。もちろん魔法の練習は行っていた。
「カルラ、貴方もちろん冒険者学校に行くのよね?」
そんな生活を2年間続けた後、オリヴィアに突然そんな言葉をかけられたのだった。
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