第4話 出会い

 あの後、何匹か動物を狩って帰った。狩った動物を浮遊させ家へと入った。俺は忘れていた。母さんに魔法が使えることも、森に行ったことも、そして動物の返り血で体が血まみれなことも。


「カルラどうしたの!?その動物、そしてその血!何があったの!?」


「母さん落ち着いて聞いて!一つずつ順番に説明するから」


 そう言って俺は、魔法が使えること、黙って森に行ったこと、そして魔法を使って動物を狩ったことを母さんに伝えた。


「カルラ…あなた魔法が使えたのね…。それなら森へ行っても大丈夫でしょうけど…。それでも、一人で黙って森に行くのはだめです!帰ってきたカルラの姿をみてお母さんがどれだけ心配したことか…!」


 そういって母さんは、俺を抱きしめた。


「ごめん、母さん。今度から森に行くときはちゃんと言うから。」


 俺がそういうと母さんは俺から離れた。母さんの服は俺の服についた血で血まみれになってた。


 そのことに気づいた母さんは苦笑いしながら言った。


「服、着替えて洗わないとね」


「それなら、俺に任せてほしい。」


 新しい服に着替え、血の付いた服を念力で持ち上げる。魔法で水を出し、念力を使って揉み洗いをする。血が取れたら念力で服を絞り、脱水をして広げる。あとは風の魔法と火の魔法を合わせて温風を当てる。


 それが終わるころには俺は汗をかいていた。特に最後の温風、あれは神経を使う。火の魔法が強すぎると燃えてしまうし、逆に弱すぎると乾かない。いい塩梅での調整が難しいのだ。だからこそいい魔法の鍛錬になると思ってやらせてもらったのだが。


 母さんは終始感心してた。というより驚いていた。その日の夜は魔法の話題で持ちきりだった。いつから使えるのかとか、どんな魔法が使えるのかとか。それらの質問に一つ一つ答えていった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 次の日も森に行っていた。昨日の晩御飯はとってきた動物たちで、とてもおいしかったのだ。あれらがまた食べられるのなら頑張って狩りができるというもの。


 それは獲物を探して歩いていた時のこと。


「なんだこれ…」


 岩肌に空いた穴を見ながら俺はつぶやいた。穴の周りには古代ギリシャを彷彿とさせるような装飾がされており、穴の奥には階段が下へと続いていた。本来なら引き返すべきなのだろう。だが俺は好奇心が強くあった。そして人間は好奇心に逆らえない生き物なのである。


 俺が足を踏み入れようとした瞬間、


「そっちから来てくれとは、助かるわね」


 後ろから、声をかけられた。


 俺は即座に振り向いて尖った石を念力で浮かせ相手の首筋に合わせた。振り向いた先にいたのは黄色い目の女性だった。きれいな赤髪を腰あたりまで伸ばし、ローブを羽織っており、ローブの下には黒を基調とした服をきており、胸元は大きく押し上げられていた。


「安心しなさい、私はあなたの敵じゃない。むしろあなたの味方よ」


「そういわれて警戒を解くほど馬鹿なつもりはないんだけど」


「そうね…」


 彼女はそういうと指を鳴らした。その瞬間彼女の周りに浮いてあった尖った石はすべて力を失い地面に落ちた。


 俺は再び「念力」で浮かせようとするがうまく浮かび上がらなかった。それで分かってしまった。彼女との力量さを。俺は抵抗するのをあきらめて、両手を挙げた。


「降参だよ、俺のことを好きにするがいいさ」


「どうもしないわよ。最初から危害は加えないって言ってるでしょう?それに私があなたを攻撃しようと思っているとしたら、もうあなたこの世にいないわよ」


 彼女は呆れながら怖いことを言った。そして彼女は穴の中に入って言った。


「ついてきなさい、話は中でするわ。」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「私の名前はオリヴィア。あなたは?」


 俺は地下にある客間に来て、彼女と向かい合わせで座っていた


 俺は軽く自己紹介をした。


「カルラ、ね…。あなた、神からの”贈り物ギフト”をもらってるでしょう。だからこそ声をかけたのだけれど」


 俺はぎょっとした。神から”贈り物ギフト”をもらったことは言ってなかったからだ。


「なぜそのことを知っているの」


「なぜって、私も同じだからよ」


「同じって、あなたも転生したってこと?」


「そゆこと。私の場合は、前世もこの世界だっけど」


 オリヴィアは前世でいろいろあったらしく、死後俺と同じように”天界”に呼び出されたらしい。その時に”贈り物ギフト”とともに、”使命”をもらったらしい。


「”使命”?」


「そう。私を転生させ”贈り物ギフト”を与える代わりに、神の名のもとの任務を行わなければならないって。任務の内容は、その都度連絡するって。あなたも言われたでしょう?」


 確かに言われた気もするな…。


「いろんなことをしたわね…」


オリヴィアは何かを懐かしむような眼をしながら呟いた。


「さて、そろそろ本題に入りましょうか」


 オリヴィアは少し姿勢を正して言った


「あなたには私の技術を継いでもらうわ」


 え?

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