第2話
あのイヤーカフは珍しくも私のお気に入りになった。普段買わないアクセサリーという少しばかりハードルが高いように感じたが、デザインのおかげでファッションとの相性がいい。そして長時間つけていても痛みを感じない。だからどこ行くにもそれをつけて出かけ、早二年ほど経とうとしていた本日。そのイヤーカフが見当たらない。どこに置いたかすら心当たりがない。明日友達と出かける予定があり、それで付けていこうと思っていたのに。とにかく日常使いしているかばんやアウターを探す。
「…ないな」
勿論ジュエリーボックスの中にもない。最近出かけたのは近所のスーパーか車で30分くらいのところにある激安スーパーしか行っておらず、あのイヤーカフが気に入ってるとはいえ、スーパーには付けて行ったことはない。
「なくした」
一人暮らしの部屋で呟いたそれは私の心に重くのしかかった。まるで大量の水が入ったバケツを持ち上げた時みたいに重心がゆらゆらと安定しない。そして脳はデータ制限を迎えたスマホ並みに処理能力が遅くなる。やることはわかっているのに、何から手を付けていいかわからない。彼氏になくしたことと謝罪の連絡をするか、行った記憶がある施設へ連絡するのが先か、それとももう一度部屋の中を探してみるか。
「まじかぁー…」
頭をガシガシとかきむしる。今手元にないことの衝撃がすごい。絶対に無くさないとは思ってなかったが、こんなに早く無くすとは思っていなかった。
「最悪だ」
とりあえず明日に備えて寝ることを決めた。
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