きまずい

雪田るま

第1話

私には5年交際している彼氏がいる。この人と私は気が合うのだが、服の趣味や食べ物の好みなどそういった好みに関しては全く合わない。昔はよく洋服などプレゼントしていたが、数回着ただけでタンスの肥やしになったものをいくつも見た。別に腹立たしいとかそういう話ではない。私も好みでないものを送られたらそういう扱いになるだろうし。だから私たちは何でもない日のプレゼントをしなくなった。誕生日プレゼントはお互いリサーチするか一緒に買い物に行くことが定例。そうすれば確実に使う合理的なプレゼントになるからお互いストレスがない。


「え?今日のお土産お菓子じゃないの」

「うん、いつも乗る駅だとお菓子の種類少なくて買いつくしちゃったし」


そういって彼氏は小さい紙袋を差し出した。プレゼントはないがお土産はある。彼氏は営業という仕事柄、出張が多い。その時は必ずお菓子のお土産をねだった。選びやすいし、お菓子は基本どれもおいしい。地方に住んでいて旅行に行くお金もない私にとって各地のお土産は小さな楽しみでもある。だが今日はお菓子ではないらしい。若干の落胆とその小さな紙袋の期待により中身を取り出した。

中身は金のイヤーカフだった。交差しているデザインのもので一列にはビジューが連なってついている、太めだが上品なものでつけやすそう。


「珍しいね、どうしたの」

「いや、最近プレゼントしてなかったなって」

「いくらしたの、これ。箱とかついてるから高かったでしょ」

「あー…お土産3箱くらい?」

「結構したじゃん!えぇ…、私も最近プレゼントしてないのに」

「だからしばらくはお土産なしだよー」

「えぇ!それは困る」


なんて話をした頃がなつかしい。出来ることならあの頃に戻りたい。いやなんなら半月前でいい。神様、おねがい時間を巻き戻して。


私は彼から貰ったイヤーカフを無くした。

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