打てよ魂、響け勝鬨②
「くたばれえええ!!」
野球で出す叫びじゃないだろ!内心でツッコミながら、俺は目を瞑るのではなくしっかり奴の手を見据える。
おおきく振りかぶって投げたボールは…正面のストレート。
「せいやぁぁぁ!!」
俺は裂迫の気合いと共に左足を僅かに持ち上げてからザッ!とバッターボックスギリギリまで踏み締め、半身を捻り思い切りバットを…振る!
キィン!
「ぬぁっ!?」
「ちっ!かかりが甘かったか…!」
タイミングはドンピシャのはずだった。
しかし、予想していた手応えとは真逆の浅い感触を残しボールはバットの下へと溢れる。
悟の投げた球種は、ストレートと見せかけたフォークボールだったらしい。
「やるね…点を取るのも楽じゃなさそうだ」
「けっ!見事に空振りさせてやりたかったぜ」
キャッチャーからボールを受け取る最中、束の間軽口を交わし合う。
何だか楽しくなってきた。そうこなくちゃ面白くないよね!
数回素振りをして感覚を慣らして、手からすっぽ抜けないようしっかりと握り直しながら再度バットを構える。
「紳人!頑張るのじゃぞ〜!」
「あぁ!」
そんな時、ベンチ…に見立てたエリアからコンからの声援が響いた。
「応援しておるからの!」
「ありがとう!」
「頑張ったらご褒美あげるのじゃ!」
「楽しみだ!」
足で地面を削るように蹴り足元を整える悟を見ながらも、コンからの期待に応えるべく俺の士気はこの上なく跳ね上がる。
次で決める…っ。
「なぁ紳人」
「ん?」
「お前をコロス」
デッデン!!
「いやその宣言はおかしいでしょ!速攻でアウトにしてやるとかじゃないの!?」
「うるせぇ!お前だけ柑ちゃんに応援してもらいやがって、俺だってあんな可愛い従兄妹に応援してもらいてぇよ!」
「そうだそうだ!」
「中田くん!?」
敵チームからの野次に何故か此方のチームメイトが同調。しかも冗談めいたものなら微笑ましいものだが、その目も短い黒髪を揺らしながら振り上げる拳も本気と書いてマジだ。
完全に四面楚歌である。
「でもほら、未子さんや明だって応援してくれてる!仲間の声援がいらないって言うの!」
このままではまずい。俺は慌ててBチームのベンチを指差した。
「頑張れ悟くん。ファイト〜!」
「が、頑張って…いけるよ…!」
『頑張れ〜!』
「皆、ありがとう」
ハッとしたように手を振ると、帽子を直し…顔を上げた悟は憑き物が落ちたように清々しい笑顔になっていた。
どうやら分かってくれたらしい。そうだ、君はひとりじゃない。こんなにも応援してくれる友達が居るんだ。
俺にコンが居るように、お前にも…!
「貰った応援で、紳人だけは倒す!」
「なして!?」
「嬉しい気持ちで羨ましい気持ちは消せねぇんだ」
「ちくせう!掛かってきやがれぇ!」
全く落ち着いてない。俺の必死の説得も、彼の心には届かなかったようだ。
「おらぁぁぁ!!」
悟の手から万感の思いを乗せたボールが放たれる。
凄まじい気合いと嫉妬、それは人の心の持つ力…即ちエネルギー!
ならば此方も…愛の力で迎え撃つ!
「コォォォォン!!」
愛しき
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