微睡みは、時の狭間で②
「は〜い皆さん、席に着いてください…って、もう皆さんお眠のようですね」
「え?本当だ!皆寝ちゃってる…!」
「わしら以外全滅じゃな」
ウカミが教壇の前に経ちHR前の恒例の一言を告げる。
が、その時には既に未子さんも含めたクラスメイト全員が机に倒れ穏やかに寝息を立てていた。
「う〜ん、やっぱり皆さん徹夜したのでしょうか?勉強のしすぎは駄目とお伝えしているはずなのですけど」
「いやこれは絶対何かしらの神様の」
「まぁ今日は自習にしましょう!紳人、私たちも個人授業…します?」
男子高校生なら誰もが憧れる美人、いや美神教師との内緒の個人授業。その赤い眼差しとスーツ姿を見せられ、刹那に過ぎるあれやこれ。
「……その前に俺の話をだね」
「何故今即決せず断らなかったのか、紳人とわしで個人面談じゃ♪」
「いや待っぐがががっ!?」
1秒近く固まってしまっていたらしい。あっさりと俺の葛藤を見抜かれ、コンの尻尾で俺の首が圧迫するように締め付けられた。
もふもふだけどやっぱり苦しい。天国と地獄は同時に存在するのだと、この時はいつも痛感する。
「恋人との二人きりの甘々な勉強会もあるじゃろうが…今朝もあんなにラブラブじゃったのに、このたわけ!」
「は"い"…す"み"ま"せ"ん"」
更にそのままブンブン!と肩を揺らす感覚で前後に揺さぶられるものだから、俺の意識は加速度的に刈り取られていく。
頰をお餅のように膨らませ金色の瞳を潤ませるコンは可愛い。けれど、嫉妬させてしまった以上俺は責任を取らなければ。
徐々に薄れゆく意識の中で、もう一度コンにごめんねと詫びる。
「まぁまぁ。コン、それ以上するとツクヨミのお二人に会わせてしまいますよ?」
「む…それはいかん。彼奴らにもしっかり反省してもらわなければならぬからの」
教壇から離れ俺たちの前に立ったウカミに宥められ、臨死寸前で俺は
コンの嫉妬を煽ったのもウカミなのだが…敢えて指摘しなくても良いだろう。
反応してしまった俺が悪いからね。
「すぅ、はぁ。よし落ち着いた!ウカミ、これってやっぱり」
「はい。私たち以外の神の力だと思われます」
「?、珍しく曖昧だね…さっきのコンも不思議な感じって言っていたけれど」
「うむ。それがな、どうやらこの力学校全域に広がっておるようなのじゃ」
コンの言葉に軽く驚くけれど、朝なのに隣のクラスの声も聞こえないしあまり人気も感じられない。
うちのクラスだけなのかと思いきやそうでもないみたいだ。
「しかも、その中心たる神の気配が何処にも無い。それが気になってのう」
「なるほど。これは、人体に害は無いか分かる?」
「それは心配ありません♪純粋に、皆様を眠らせる類のものですね」
「なら焦る必要は無いかな」
ひとまず害は無いのなら、向こうにも悪意がある訳じゃないということ。
諸々安心だ。
「さて…此処からどうしよう?何もしないと言うのも、何だか複雑だし」
「では会いに行ってみるのじゃ!」
「場所が分かったんだね?」
昨日の今日で彼女たちに頼りっぱなしなのは申し訳ないから、俺も出来ることがあれば手伝わせてもらいたい。
「それで、件の神様は何処に?」
俺の質問に一度目を合わせたコンとウカミ。
すぐにくすっと
「夢の中です♪」
「わぁお…夢みたいな話だ!」
「其奴が夢の中にいると言うのは、現実じゃがな」
こうして、俺たちは今朝から感じていた眠気を利用して夢の中へと落ちていくのだった。
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