再び見える、小銀の乙女③

「真っ赤に燃える〜♪」


騒がしくも楽しい学校が今日も終わり、サプライズな未来で流れていそうな歌を歌いつつシャカシャカと泡立てたシャンプーで頭を洗う。


「うゃぁ……」


隣からコンの深い吐息とザパァと身動きしてお湯が跳ねる音が聞こえる。


シャンプーが入ってこないよう目を閉じているので、コンの入浴する様を想像してしまい…ゆらりと煙がたなびくようにいけない気持ちが立ち込めてきた。


鋼の理性でそれを抑え込み、いつの間にか止めてしまっていた頭を洗う手を再び動かす。


コンの可愛く素敵な体…虜になってしまいそうだけれど、少なくとも今こうしてリラックスしているコンの邪魔をするなんて俺には出来ないからね。


そういうのはもっとこう、ムードを大切にしないと。


「んふふっ♪」

「コン、何だか楽しそうだね。その入浴剤の匂い気に入った?」

「ん?そうじゃな…とぉっても、大好きじゃ!」

「そっか。それなら良かったよ、本当に」


今日の入浴剤の匂いはラベンダー。コンを此処まで喜ばせるとは、やるな!


近い内、改めてもう一度買い足しておこう。


やっぱりコンに喜んでもらえるならそれが一番だ。


「ん?な、待…!」

「コン!?」


瞼の上まで落ちてきたのでそろそろ洗い流そうとシャワーを探していた時、突然愛しい声が聞こえなくなった。


もしかして、突然悪い神様がコンを狙いに来たのかも!?


慌てて立ち上がりお湯を思い切り被る。


ふにゅんっ。


「っ!?こ、コン?無事?」

「……」


背中に柔らかなものが押し付けられ、思わずドキッ!と鼓動が高鳴った。


明らかに感触やぬくもりは人肌、そして二つ。


間違いなくコンが俺をドキドキさせようとしていること。そのはず、なんだけど…気のせいかな。



そして一瞬だけふわりと嗅いだ、シャンプーやお風呂の香りとはまた違う


「♪」

「!」


背後で微笑む気配、そしてモフッと俺に当てられた柔らかさと弾力に溢れた尻尾の手触り。


違う!これは…コンのお胸と尻尾じゃない!?


ザァァ!思い切り蛇口を捻り熱いお湯で顔を洗い、腰にタオルを巻いてるのを確認してから素早く後ろを振り返ったそこに居たのは!


「あら、バレちゃいましたか♪」

「う、ウカミちゃん…!?」


自分の尻尾で大事なところを隠しつつも、足や華奢な肩など魅惑的な場所は覗かせる隠し方をする…小さなウカミ。


通称、ウカミちゃんであった。


「---こぉらウカミィ!早く離さぬかぁ!紳人もまじまじと見るでない、わしの体を見るのじゃあ!」

「ご、ごめ……あぁごめん!!ウカミもごめんね!?」

「いえいえ。もっと見ても良いんですよ?」

「「ウカミ!!」」

「きゃ〜♪」


コンはウカミの片方の尻尾にぐるっと巻き付かれていた。


それも、何故か女の子の秘密だけは綺麗に晒け出された状態で。


そんな艶姿に思わず見惚れてしまい、顔が熱くなるのをハッキリと自覚しながら両手で顔を隠した。


今の今までコンの声が聞こえなかったのは、以前のように音を消されていたんだろう。


尚も揶揄うウカミちゃんに声を揃えて指摘すると楽しそうに笑いながら、とててと可愛らしい足音と共にお風呂場を後にする。


「……何じゃったのじゃ?」

「……神様のいたずら、かな」


ヘトヘトになった俺とコンは、暫く湯船の中で体を寄せ合っていた。


〜〜〜〜〜


「で、何でウカミちゃんになったの?」


お風呂上がり。


俺は膝の上に座ったコンの髪の毛を丁寧にタオルで拭きながら、ほんの少しだけ距離を空けて座るウカミに早速疑問をぶつけることにした。


「もう!女の子の口から言わせるだなんて。えっちですよ、紳人♪」

「え?ごめん…?」

「落ち着くのじゃ紳人、絶対おかしかろう」


ぽふぽふと尻尾で頬を撫でられて正気に戻る。


確かに俺、そこまでえっちじゃない!かも!

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