再び見える、小銀の乙女②

刺激的すぎる目覚めと穏やかな朝食を終え、俺たちは登校した。


「あ、おはよう紳人くん!柑さん!今日も早いね〜」

「おはようじゃ、未子よ。其方こそ早いではないか。のう紳人?」

「本当に。俺たちは先生のウカミと一緒に出たからだけど、未子さんはそうじゃないでしょ?」


教室へと着いた俺とコン。まだまだ朝のHRには余裕があるので、登校してきているのは三分の一程度だ。


挨拶を交わしつつ自分たちの席へ向かうと、笑顔で未子さんが出迎えてくれる。


「私はどうしても早起きしちゃって。大体こんな感じだよ」

「そういえばそうだったかも?」

「お兄さん!」

「ん?おや真奈ちゃん、おはよう」


不意に名前を呼ばれ其方を向けば、そこにはニコニコ笑顔の真奈ちゃんが教室の入り口から顔を出していた。


俺たちの席は教室の前の方それも廊下側にある。そのため、入り口や窓から声を掛けやすい。


彼女だけそんな体勢にさせるのも申し訳ないので三人とも廊下へと出て、邪魔にならないところで固まった。


「どったの、こんな朝早くから?通りがけに声をかけてくれたとか」

「まぁそんなところです♪ところで皆さん、今日は何の日か知っていますか!」

「む?カレンダーには何も記載されておらなんだが…」


突然出題された真奈ちゃんからのクイズ。


俺と顔を見合わせて小首を傾げるコンも、軽く上を見上げて頭を悩ませる未子さんもピンと来ないみたい。


そういう俺自身も、全く思い付かないんだけどね。


今日は4月13日の月曜日。何かあったかな?


「お、何だ何だ。皆して何を話してるんだよ」

「おはよう、皆…」

「悟、明!おはよう、今日が何の日かを皆で考えているのさ」


そこに悟と明の二人が揃って現れる。これで、いつもの顔ぶれが勢ぞろいだ。


話の内容が気になったみたいなので、はぐらかしても良かったけどまぁ素直に教えてあげるとしよう。


感謝したまえよ悟くん?


「何か…失礼なこと考えてねぇか、紳人?」

「そんなことないよ。俺と君は大親友!心の友だ」

「おぉ!それもそうだな、すまんすまん」

「本当だよ〜」

「「はっはっは!」」


そう。俺たちは気の置けない仲だ!


利用価値が無くなるその時までは。


「お主らが本当に友達なのか、わしからしてみれば疑わしいのじゃ…」

「コン。シー…内緒だよ」


ポツリと漏らしたコンの訝しむような視線に、人差し指を立てて誤魔化す。


本音を言うならば、事あるごとに嫉妬の念に駆られて俺の安寧を脅かす奴なので気の置けないというよりが正しい。


「んで、話戻すけど今日が何の日だって?そんなの、13日の月曜日に決まってらあ。有名なB級映画のタイトルだぜ」

「悟さん凄い!正解です!」

「「何ぃ!?」」

「「お〜」」


何を当たり前なと言わんばかりにさらりと正解する彼に、俺とコンは目を見開いて驚愕し未子さんと明はパチパチと手を叩いて称賛した。


「ふははは!朝っぱらから女子に囲まれて鼻の下を伸ばしてるから、こんな単純な答えに気づけんのだ!」

「くっ!訳の分からない理由で負けた…あと鼻の下は伸ばしていない!」

「うるさいうるさいうるさい!何でお前ばかりぃ!」


男がやっても微塵も可愛くないんだな、と思いながら微苦笑を溢す。


「お兄さんたち楽しそうです。いいなぁ、私が3年生になるまで待っててくれませんか?」

「2年も留年しろと!?」

「流石にそんなには待ってやれぬな…それに、なぁ?」

「あはは…」


チラリ、とコンが横目で俺を見上げてきた。俺はそれを笑って誤魔化す。


俺とコンは、高校卒業を機に結婚する約束を交わしている。2年も結婚が長引くなんて、お互い耐えられそうにない。


「もしそうしたいのであれば、吝かではありませんよ?コン、弟くん♪」

「姉さん!勘弁してください!」


宇賀御先生こと我が姉ウカミが姿を見せた。スーツ姿が似合っていて、とても美しい。


彼女が来たということはもう間も無く朝のHRが始まるということ。


真奈ちゃんとはお別れして、俺たちは全員そそくさと自分の席に座るのだった。

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