幾度となく、時が過ぎようと②
「……ん?どうかしたかの、紳人」
ふと俺と目が合ったコンはその微笑みのまま俺を見上げる。
ぴこぴこと可愛らしく揺れる耳、綺麗な瞳と幼さすら感じさせる頰。艶やかな髪に揺らめく尻尾と窓からの微風に揺れる制服。
そして香る、仄かな花の匂い。
「ううん。何でもないよ」
微笑みを返しながら俺は首を横に振った。
「紳兄?」
キョトンとしたカナメの前で見惚れていたというのが、何だか恥ずかしかったからね。
「あれ、紳人くんに柑ちゃん。次の授業始まるよ?」
「もうそんな時間じゃったか、ありがとのう」
そんな時、未子さんが後ろからやってきた。
相変わらず眼鏡姿が良く似合う。
次の授業…クラス委員決めにおいて、今学期も彼女が委員長になるのは間違いない。
周りの人からも推薦され、自分からも未子さんは立候補するはずだ。
「あれ?紳人くんたち、誰かと話してなかった?」
「えっと…ちょっとした神様と、ね」
再度周囲を確認し人影が無いことを確認してから念の為小声で囁く。
「へ〜!それ、私も知ってる神様?トコノメさん?」
「いや彼女なら君の横で相変わらず佇んでるね。そうじゃなくて、彼の名前はカナメだ」
「カナメさん…うーん。何処かで聞いた気がするなぁ」
実は繰り返された時間のことは皆覚えておらず、未子さんもループそのもののことは覚えていないみたいなんだ。
でも、カナメの名前は聞き覚えがあるようで。何だかんだ接してる時間は多かったからかも?
「紳兄、コン姉。授業遅れちゃうよ?ほら」
「弟くんにコンさん、鳥伊さんも。新学年早々遅刻はめっ、ですよ〜」
「おっといけない!カナメはどうする?」
「折角だから付いていくよ。アナログ時計があれば、オレも付いていけるからね」
「賑やかに成りそうじゃな」
「私にも見えたら良いのに…」
笑い合う俺たちを見て羨ましそうにする未子さん。トコノメが気まぐれに姿を見せてくれるはずだ、その内。
ウカミにちょいちょいと手招きをされるまま、俺たちはそそくさと自分たちの席へ着席した。
尚…その際ウカミのアレが揺れていたのを思わず目で追ったことは内緒だ。
いや、尻尾だよ?うん、尻尾尻尾。柔らかくてもふもふしてるからね!
(紳人、アウトじゃ)
(え?)
(帰ったら…覚悟するが良い♪)
(……はい)
コンには、隠し事はできないみたいです…。
〜〜〜〜〜
「それじゃあ、委員長は鳥伊さんで、いいですか!?」
『良いとも〜!』
何だかノリノリなウカミの下、やっぱり立候補した未子さんに委員長は決定した。
「やっぱ俺たちの委員長って言ったらな!」
「僕は、クラス違ったけど…でも、分かるよ」
悟と明が隣り合った席で頷き合っている。仲の良い彼らが一緒のクラスなのは、やっぱり俺としても嬉しいよ。
『フッ、当然だな』
『未子殿は本当凄い、人望も厚いし見事である』
未子さんの守護神たるトコノメと明の守護神たるラスマも、楽しげに笑い合っている。
「オレが居た時も、優しかったよ〜」
(分け隔てなく接することができるのは、未子さんの長所だね)
うんうんと頷くカナメ。どんな時でも、未子さんは変わらないのは流石だ。
「うむ。彼奴の優しさは中々のものじゃ、わしら神のことも受け入れられる強かさもあるしの」
未子さんのことを手放しに褒めた俺と同じように、素直に褒めるコン。
どうやら彼女も、褒めるのにも色んな目線があると分かってくれているようである。
良い傾向…と思っていると、コンの尻尾は俺の腰にきゅっと巻き付けられた。
やきもち焼きなのはコンの可愛いポイントの一つだな、と俺はこっそりコンの尻尾を撫でてずっとそのままで居てほしいな…と思うのだった。
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