甘い香り、心踊って④
「あの、紳人さん…本当に大丈夫ですか?」
「明らかに膝が笑っておるぞ!」
「だ、大丈夫。一瞬ツクヨミの二人に挨拶した気がするけど大丈夫」
皿の上のプリンは、形容し難い味がした。
ただ一つ言えるのは…これを食べたのがコンたちじゃなくて俺で良かったということだ。
でも、でも食べ切ったぞ!つまり!
「此処からは、俺のステージだ!」
キッチンはマイステージってね。曖昧三センチマインのお時間です!
未子さんのお母さんにあったかいお茶を貰った後、コンの尻尾をこっそりモフらせてもらって元気百倍。
しっかりとした足取りで台所へと向かい、プリン製作に取り掛かった。
キャラメルソースの焦がし具合に注意し絶妙な塩梅で火を止めると、鍋底を水に浸して一気に冷却し絶妙なほろ苦さの味わいを目指し。
人数分の卵と牛乳と生クリームを合わせた液体を、加熱してもプリンが固まらなくなる寸前の分量で混ぜ合わせることで極上に滑らかかつプルプルなプリンへ仕上げようとして。
未子さんの家の立派なオーブンで蒸し焼きにする際、プリンの型半分までを沸かしたばかりのお湯に浸して乾燥を防ぐ。
こうして…!
「紳人スペシャル•改!完成だぁ!!」
『お〜!』
粗熱を取ってから、出来立てのプリンを人数分テーブルへと並べた。
皆一様に良い反応を見せてくれるが、やはり目を輝かせて今にも飛びついてしまいそうなコンとウカミが誰よりも可愛らしい。
「紳人、紳人!もう食べても良いかの!?」
「私ももう我慢できません!」
「俺の舌を唸らせることができるかな!」
「私も貰っちゃって良いのかしら…?」
「一緒に食べよ、お母さん♪」
浮き足立つ五人につい微笑んでしまいながら、手を軽くつついと出してどうぞどうぞと促す。
『いただきま〜す!』
そして皆は一斉に手を合わせ(コンは皆より大きめに)一口掬い、ぱくりと食べた。
やはり何を、何度作っても。この瞬間は緊張の瞬間だなぁ…。
全員がスプーンを咥えたままの姿勢で固まり、1秒また1秒と過ぎていく。
コンとウカミは耳と尻尾も動かさないからその気持ちを読み取ることもできない。
「ど、どう?」
待ちきれなくなって、俺が恐る恐るコンに訊ねると…ホロリと一粒涙を流してこう返された。
「紳人…わし、お主に会えて本当に良かったのじゃ…!」
「プリン一つでそんな大袈裟な!?」
「私も、絶対に弟くんたちの成長を見守っていくと改めて決めました…!」
「俺、もう絶対プリンで冒険しねぇから!たまにで良いからこれを食わせてくれ!」
「私も…紳人くんのプリンは五つ星だって皆に教えるよ!」
そしてコンに袖をきゅっと掴まれながら、恍惚とするウカミ、憑き物が落ちたような顔になる悟と幸せいっぱいとばかりに微笑む未子さんを眺め相当喜んでもらえたのだと分かった。
あぁ…本当に良かった。やっぱり、自分が作ったものでこんなに喜んでもらえたならそれ以上に嬉しいことはないのだから。
「私も、もうあなた無しじゃ生きていけません…!」
「プリンですよね?プリンの話ですよね!?」
語弊のある言い方で褒めてくれる未子さんのお母さんこと
ヒヤヒヤするから、是非とも落ち着いてほしい…夜の
ええい!折角プリンパワーで万事解決して、ツクヨミにノルマ達成って笑われずに済みそうなのに。
此処まで来て…お仕置きされるわけには!もふもふは好きなので、せめてこのままの状態を維持するんだ!
オチの神様!いつも俺が尻尾でやられると思うなよ!?
「コン、ウカミ!落ち着いて聞いてほしい、俺は…」
「紳人の浮気者ぉ!」
「紳人さん、教育的指導ですぅ!」
「ぐおおおお!!」
極上のもふもふ二つに締め付けられ、瞬く間に俺の意識は闇に落ちていった。
やっぱり…こうなっちゃうのね…。
〜〜〜〜〜
「「ノルマ達成、おめでとう」です」
「うぅ…今回こそはと思ったのに!」
彼岸にて、俺はツクヨミの
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